ゴルフPRESSBACK NUMBER
「宮里藍に次ぐ史上2番目の若さで」18歳で脚光を浴びた“元日本代表の逸材”が医師から“引退勧告”…30歳ゴルファー再起のウラ側
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byShizuka Minami
posted2023/08/22 11:00
2019年カナディアンパシフィック女子オープン初日、プレー中に何度も座り込んだ野村敏京。医師に引退勧告を受けるほどの腰を怪我に悩まされてきた
翌年、早々に復帰を果たした野村は上々の成績を残していく。しかし症状の回復は一時的なものだった。
その後は身体の具合と相談しながら試合に出場を続けていたが、ついに痛みが限界を超えたのが2019年8月『カナディアンパシフィック女子オープン』だった。
1カ月前の試合でも最終日に棄権していた野村は、同大会の初日でもプレーの合間に顔を歪め、何度もしゃがみ込んだ。関係者から「大丈夫?」と声をかけられても、うずくまったまま。返事をする余裕すらなかった。最終的にクラブハウスに歩いて戻ることもできず、カートで運ばれるように会場を後にしたのだった。
野村は決して簡単に人前で弱音を吐くような性格ではない。それを知っているからこそ、うずくまる野村の姿が衝撃的だった。レンズ越しに捉えた、あのシーンは今も脳裏に焼きついている。
引退も視野に入れて大学院へ
なんでこうなってしまったのか。すべては身体に関する知識不足が招いたことだと野村は反省した。
「やっぱり、ジュニアの頃から体やトレーニングに関する正しい知識を学んでいれば、普段からそういうトレーニングなどに取り組んでいたでしょうし、ここまで症状は悪化してなかったと思います」
野村は合間の時間を使い、大学院を受験した。韓国の慶熙(キョンヒ)の大学院に合格し、2022年春からスポーツ医学を専門的に学ぶことにした。
「学ぶことは好きなんですよ。もしゴルフ選手じゃなかったら、地球のことを研究する科学者になることが夢だったので。それに強い身体ができれば、新しい視点でゴルフを見れるようになると思う。今後、私みたいに怪我を理由にゴルフができなくなる選手が出てきて欲しくないし、後輩たちに求められた時に正しいアドバイスも出来るようになりたい」
大学受験はセカンドキャリアを見据えてのことだったのだろう。腰の具合を見ても、そう長くはプレーできないかもしれないーーそんな現実を受け入れたはずだった。
だが、自宅のテレビで韓国ツアーの試合を目にしたことで、揺れ動く自分の心に気づいた。