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「宮里藍に次ぐ史上2番目の若さで」18歳で脚光を浴びた“元日本代表の逸材”が医師から“引退勧告”…30歳ゴルファー再起のウラ側 

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南しずか

南しずかShizuka Minami

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posted2023/08/22 11:00

「宮里藍に次ぐ史上2番目の若さで」18歳で脚光を浴びた“元日本代表の逸材”が医師から“引退勧告”…30歳ゴルファー再起のウラ側<Number Web> photograph by Shizuka Minami

2019年カナディアンパシフィック女子オープン初日、プレー中に何度も座り込んだ野村敏京。医師に引退勧告を受けるほどの腰を怪我に悩まされてきた

 そんなキャリアの絶頂期に差し掛かった頃だ。腰に違和感を感じ始めながらも試合に出続けていると、症状が徐々に悪化した。ストレッチなどケアをしても一向に良くなる気配がなく、病院で精密検査をすると、そこで『腰椎すべり症』と診断された。

『腰椎すべり症』とは、何らかの原因で連なっている腰椎(腰の骨)が前後に滑って位置がずれることで脊髄神経を圧迫し、足腰の痛みや痺れなどの症状がおきるもの。ゴルファーのスイング動作が想像以上に負荷をかけていたのだろうか。野村の場合、腰椎の一つが前方にずれたことで、腰と右足に強烈な痺れと痛みを感じていた。

「(ひどい時は)歩けなかった。5分ぐらい歩くだけでもすごく痛くて……ゴルフができる状態じゃないですよ。医者からも『もう辞めたほうがいい』と言われました」

「ゴルフをしてもいいと言ってくれる医師は…」

『腰椎すべり症』はひどい場合は手術も行われるが、治療法は保存療法が主とされ、症状を改善させるためのセルフケアが必要となる。言わずもがな、体への負担が大きいスポーツは推奨されない。ドクターストップがかかっても仕方がない状況だった。

 とはいえ、10代から将来を期待され、トップクラスの実績を残してきた20代半ばのゴルファーが急に「引退勧告」を受けてもすぐに納得できるわけもない。ゴルフをしてもいいと言ってくれる医師はいないか。何か他にいい治療法はないか。野村は一縷の望みにかけてさまざまな病院を受診した。しかし、その願いも虚しく、どこの医師の見解も同じだった。

 2018年8月を最後に治療に専念することを決意した野村はその年の冬に約1カ月半入院し、保存療法にトライした。

【次ページ】 引退も視野に入れて大学院へ

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