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なぜ鎌田大地は1年前「ベンフィカ行き飛行機チケット」が手元にあったのに残留した?“結婚の過程”もCLも…本音で語るライフプラン
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/08/20 11:08
2022年の鎌田大地。「ベンフィカ加入」目前の中でフランクフルトに残留した経緯とは
「わかりました。来シーズンのことはわからないですけど、少なくとも今シーズンはどこかに移籍したりもしませんし、僕も監督とチームのために全力を尽くします」
グラスナーは契約問題について口を出してくることの多いフロントから、選手を守ってくれるタイプの指揮官だった(そういう姿勢がクレシェSDの意向とは合わず、昨シーズン限りで袂を分かつ一因にもなった)。
鎌田はこのような形で監督と会話をかわすことが多いタイプではないが、その代わり、そこで約束したことはきちんと守る人間だ。だから「2022-23シーズン限りでフランクフルトから去ることが決まっているために心がここにあらず」だと地元メディアから指摘されたときは、さすがに不信感を覚えた。
「僕はフランクフルトにかかわるほぼ全ての人に感謝しています。ただ、あそこで事実と違うことを書いて、僕への評価がものすごく低かったフランクフルトの地元メディアだけは……」
そのつもりで結婚を前提に、付き合ってほしい
ベンフィカとフランクフルトをめぐるエピソードからわかるのは、鎌田がキャリアプランをしっかり立てる選手だということだ。それはプライベートにも及んでいる。
例えばサガン鳥栖時代の鎌田は、後に妻となる女性と出会ってから1週間ほどで交際を始めたのだが、交際を申し込むとき、こんなライフプランを伝えている。
「1年半後にはヨーロッパでプレーしたいと考えていて、その海外移籍にもついて来てほしいから、そのつもりで結婚を前提に、付き合ってほしい」
そんな鳥栖時代には、Jリーグの強豪クラブからオファーがあったのに断っていた。それは、別のJクラブへ移籍したとすれば、さらに2~3年長く日本でプレーすることが一般的だったからだ。
一方でフランクフルトには、シント・トロイデンへの1シーズンのレンタル期間を含めて計6シーズン在籍した。「次のステップを踏み出すのは、CLに常に出場できるようなクラブへ移籍するときだ」と決めていたからだ。もしもフランクフルトが2022-23シーズンにCL初出場を果たしていなかったら、ほぼ確実にベンフィカへと移籍していただろう。
それくらい鎌田はCLでプレーすることを第一に考えてきた。
「僕にとっての魅力はCLです。僕は生まれてから、CLに出るチームでいつもプレーして、いつか優勝することを目標にしてやってきたので」
鎌田にとって強く記憶に残る、CLの記憶
大阪で生まれ、愛媛で育った鎌田は中学生になってから、親の運転する車に乗るときにはいつも車内でCLのハイライトを見ていた。「どこへ行くのにも車に頼らないといけない」愛媛では、思いのほか、CLを見る時間を取ることができた。
そんな鎌田にとってハッキリ記憶に残っている最初のCL決勝は、13歳のときに見た一戦、2008-09シーズンである。