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「寝耳に水。悔し涙を流した」“横浜フリューゲルス消滅の舞台ウラ”元ブラジル代表MFサンパイオが激白「奇跡の優勝? 僕はそう思わない」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/07/30 11:01
横浜フリューゲルスなどで名ボランチとして君臨したサンパイオ。あの「クラブ消滅劇と天皇杯優勝」についても語った
「僕たち選手も、寝耳に水だった。コージ(前田浩二)らが中心になって皆で話し合い、横浜駅でクラブ存続のための署名活動をした。
我々選手は、『佐藤工業が業績不振でスポンサーを降りるのは仕方ないのだろうが、せめてANAの上層部と話し合いの場を持ちたい』と考えた。給料減額を申し出る一方、『佐藤工業に代わるスポンサーを探してほしい』と要望するつもりだった。しかし、話し合いの場が設けられることはなかった。このとき僕たち選手はクラブ存続が不可能だと悟り、悔し涙を流した」
――12月2日、両クラブの合併が決定。フリューゲルスは、クラブ最後の大会である天皇杯に挑みます。
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「実績のある選手は次のクラブが決まっていたが、若手選手の中には行き先が決まっていない者がいた。ミーティングで、監督(ゲルト・エンゲルス)が『チームとして、どのような戦い方をするべきだと思うか。ベストメンバーを組むか、あるいは若手のアピールの場とするか』 と問いかけたところ、若手選手の方から『あくまでも勝利を目指し、ベストメンバーで戦うべきだ』という声が出た。僕もその考えに賛同した。素晴らしい仲間たちだと思った」
奇跡の優勝? いや、僕はそう思わない
――3回戦で大塚製薬に、4回戦でヴァンフォーレ甲府に快勝。準々決勝で強豪ジュビロ磐田を2-1で下すと、準決勝でこの年のJリーグ王者鹿島アントラーズも1-0で下し、決勝へ進みました。
「毎回、試合前に『これが一緒にプレーできる最後の試合になるかもしれない。持てる力をすべて出し切ろう』と誓い合った。試合後のロッカールームでは、誰もが抱き合い、嬉し涙を流した。あんな思いで勝利を祝ったことは、後にも先にもない」
――決勝では、清水エスパルスに先制を許しながら見事な逆転勝ちを収めました。
「試合後、宿舎のホテルで家族を含めて優勝祝賀会を開いた。お互いの健闘を称え合い、連絡先を交換したり一緒に写真を撮ったりした」
――メディアやファンの多くは、今でも「奇跡の優勝」と表現します。あなたもそう思いますか?
「いや、僕はそうは思わない。奇跡を起こせるのは神様だけ。ただ、僕たち人間はベストを尽くしたと思っても、実はまだ余力がある。あのときは、選手全員がすべての力を出し切った。だから優勝できたんだ」
ナラザキとヤマグチ、ナカタとシュンスケが素晴らしい
――4年間、Jリーグでプレーして強く印象に残る選手は?