「今年も8月に試合をしてもらいます。毎回、試合後に東大生が受験について話してくれるんです。現役時代の勉強法や浪人生活の様子、塾には行ったかどうかなど、東大生の声を聞けるのは貴重な機会です。それを経て、生徒の目つきも変わったような気がしますね」

　ライバルの浦和高校は勉強だけでなくスポーツも盛んで、野球部も強い。春の大会での直接対決では、大宮高校は3対10で8回コールド負けしている。通学エリアが重なる進学校の市立浦和高校は、外野が人工芝で、練習環境が良い。そうしたなかで、野球をやっている中学生とその保護者に、大宮高校野球部への興味を持ってもらおうと、蒲原は必死である。

「野球を通してリーダーシップや人間性が成長していくのを見守ったり、3年間で着実に野球が上手になっていく姿に触れるのは、高校野球指導者の醍醐味だと思いますね。かつての部員が結婚したり、子どもができたりという報告を聞くのも嬉しい。それになにより、教員になった教え子が野球部の監督になり、練習試合をすることもあります。昔の未熟な指導を思い出させられて恥ずかしい面もありますが、感慨は深いです」

　朝から部員たちに勉強の指導をして、通常の授業も行い、夜は練習。土日ももちろん練習や試合がある。「家は帰って寝るだけ」と話す蒲原だが、こうでもしないと選手も集まらず、野球部の存続もままならない。蒲原の指導が実を結ぶよう、祈りたい。

＜《あの伝説の男は今…》へ続く＞