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“日本人として生きる”Jリーグ屈指のGKに届いた批判「楽な道を選んだ」「本物の日本人じゃない」…朴一圭の切実な告白「傷つきましたし、寂しい」 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byMasashi Hara/Getty Images

posted2023/07/18 11:04

“日本人として生きる”Jリーグ屈指のGKに届いた批判「楽な道を選んだ」「本物の日本人じゃない」…朴一圭の切実な告白「傷つきましたし、寂しい」<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

サガン鳥栖に所属するGK・朴一圭(パク・イルギュ)33歳

「この身長(180cm)でも、こういうプレースタイルでも代表になれる、と示すことができれば、日本でGKを目指す子たちに活力を与えられると思います。もちろん、自分自身も新しい景色を見たい。あんなにレベルが高いところでやれたら、絶対にまたうまくなれるじゃないですか」

守りに入ったら、存在意義がなくなる

 日本代表を目指すことを公言する姿勢には、選手としての前向きな精神性が表れている。GKというポジションでありながら、朴は「守りに入ること」をよしとしない。もちろん最後の砦としての責任感もあれば、ミスを恐れる気持ちもある。だが、キャリアを重ねる過程で「安牌なプレーばかりしていると、いいところがまったく出ない」という自身のパーソナリティを発見するに至った。

「常にチャレンジする方向に舵を切っていないと、J1では生き残れないと感じています。7、8割の力でやれちゃう上手な選手もいると思いますが、少なくとも僕はそうじゃない。でも、だからこそマリノスで優勝できたし、鳥栖でも試合に出続けて、こうして成長を実感できている。これまで一緒に仕事をさせてもらったコーチは、みなさん『パギのよさは前向きにチャレンジしているときに出る』と言っていました。守りに入ったら、僕が僕でなくなる。すなわち、チームに利益をもたらすことができない。自分のケツを叩いてでもやらないと、存在意義がなくなってしまうんですよ」

 今季から朴は背番号を「71」に変更した。サガン鳥栖の17番は、クラブ設立のために力を尽くした坂田道孝氏の命日(1月7日)にちなみ、サポーターナンバーとして永久欠番となっている。朴はチャントでも歌われる「17の誇りを胸に」というフレーズを反転させ、「71の覚悟を背中に」背負うことを選んだ。

 圧倒的な身体能力や、人並み外れて強靭なメンタルを持っているわけではない。頻繁にボールに関与するプレースタイルは、失点のリスクと隣り合わせでもある。「正直キツいです」とはにかみながら、それでも自らのスタイルを貫き、期待や重圧を人一倍背負わずにはいられない。それが朴一圭というサッカー選手の生き方だった。

【次ページ】 マイノリティが当たり前に生きられる時代に

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