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「どうする早稲田」大学ラグビー王者・帝京にまたも完敗…“油断なき才能軍団”との差は埋まるのか?「帝京はどこまで強くなる気なんだ」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuka Shiga
posted2023/07/06 11:00
春季大会の最終節で帝京に21-60と完敗を喫した早稲田。大田尾監督がキーマンに指名する主将の伊藤大祐(左)にとっては学びの多いゲームだった
対抗戦は9月9日に開幕するが(翌日はワールドカップで日本がチリと対戦する日でもある)、4月に大田尾監督に行ったインタビューでは、こんなことを話していた。
「昔の早稲田は集散の速さとか、こぼれ球への最初の働きかけでは絶対に負けないとか、異常な『執着』を持っていた人が多かったと思うんです。ラグビーの質は変わったとしても、そうした執着の部分の価値は不変です」
夏合宿を通して、なにか「尖ったもの」を見つけられるかどうか。きっと、異常な執着を見せる選手の出現を、大田尾監督は待っているのではないか。
それでも――という不安がよぎる。
早稲田が「尖ったなにか」でその差を縮めたとしても、帝京はさらにその先に行ってしまうのではないか――という印象を記者会見で受けたのだ。
隙のない帝京「今の強さは個人の強さ」
フッカーで主将の江良颯(4年・大阪桐蔭、この日2トライ)は、これだけの大勝に一切、驕りを見せなかった。
「いまのチームの強さは個人の強さであって、チーム力とは言えないです。全員が同じ絵を見られるようにしないといけません」
寸分の隙も見せない受け答えで、いったいどこまで強くなる気なんだ、とさえ思った。
チーム力はすでに十分にあると思うが、この日はLO本橋のしなやかな走力、FL青木恵斗(3年・桐蔭学園)のブレイクダウンでの巧みさ、強さが光った。このふたり、将来はぜひとも第3列で日本代表として活躍して欲しいものだ。
2023年夏、対抗戦を取り巻く現状としては、油断なき才能軍団・帝京が大きくリードし、明治が後を追う形になるだろうか(6月3日に予定されていた帝京―明治は台風のため中止)。
果たして早稲田は、11月5日の帝京戦までに差を縮めることができるのだろうか?
大田尾監督をはじめ、コーチ陣の知恵と学生の覚悟が試される夏になりそうだ。
どうする早稲田?
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