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プロ野球スカウトも評価「50m“本当に”5秒台」ビックリ覚醒の163cm選手…“大学野球で最も打つ”飯森太慈(明治)とは何者か?
posted2023/06/23 17:08
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph by
Hideki Sugiyama
甲子園常連校出身の野球エリートが集まる明治大学野球部で、それまで“無名だった”二番打者が覚醒している。
身長163cm、体重62kg。レフトを守る飯森太慈は、とにかく、小さい。それでいて、誰よりも足が速い。明治が3連覇を果たした春季リーグ戦で首位打者(打率.426)になり、ベストナインにも選ばれた。6月に行われた全日本大学選手権でも打率.500で首位打者に輝いている。
「無名の選手」なぜ突如覚醒?
ドラフト候補が揃うチームの中で、飯森はけっして期待された選手ではなかった。佼成学園(東京)時代に甲子園はもちろん、関東大会への出場経験もない。スポーツ特別推薦で入学した選手たちとは違い、指定校推薦での入学だ。「その他大勢」から、レギュラー獲得を果たした飯森は言う。
「自分の力が通用するかもとひそかに思っていましたが、4年間ずっと試合に出られないことも覚悟して明治に入りました。選手のレベルが想像以上に高くて、自分との差がありすぎて嫌になりました。全体練習に入るのが怖かった……もうトラウマものでしたね」
明治のグラウンドにいるのは、強さとしなやかさを兼ね備えた選手ばかり。高校時代のキャリアでも、まったく勝負にならない。
しかし、飯森にはほかの選手に負けない武器があった。それは足である。
「中3くらいから、短距離走で負けたことはありません」
監督、コーチに俊足を認められた飯森は、2年生の春(2022年)、ベンチ入りを果たした。
「はじめは代走要員でベンチに入って、バッティングが追いついてきた感じです。足を評価してもらったのがものすごくラッキーでした。打力や守備力を含めた総合力を見られたらほかの選手より劣っているところが多かったので、太刀打ちできなかったと思います」
その秋にレフトのレギュラーポジションをつかみ、チームの春秋連覇に貢献している。しかし、個人的には満足な数字を残すことができなかった。
「リーグ戦のはじめのほうは打率もよかったんですが、後半に打率を落としました(.225)。9盗塁(リーグトップ)はしましたけど、課題はたくさんありました」