冬の間、飯森が取り組んだのは体力と打撃力の向上だった。

「冬の間に体力強化をはかりつつ、バットを振り込みました。ミート率が低いと意味がないし、速い打球を打たないと野手の間を抜くことができない」

　高3の夏から身長は1cmほどしか伸びていないが、体重は10kg近く増えている（53kg→62kg）。ショートの頭上に鋭いライナーを打ち返す飯森の変化に他大学のデータ班も気づいたのだろう。セーフティバントや内野安打を警戒する極端な前進守備は少なくなった。

6月中旬に行われた大学代表の選考合宿。ひときわ小柄な飯森（背番号7） ©Hideki Sugiyama

プロスカウトの評価は？

　リーグ戦前半の東京、慶應、法政との8試合で打率.320だった飯森は、その後の立教、早稲田との4試合で16打数10安打（打率.625）と爆発し、チームの3連覇を手繰り寄せた。

「早稲田戦の前にチェックしたのは、左ひじの使い方。アゴが上がるとミート率が下がるので、そこにも気をつけました。どこまで修正できたかわかりませんが、空振りしていたインコースをファウルにできるようになって、それが打率に反映されたと思います」

　打席を重ねるうちに、「この場面ならこういうバッティングを！」と割り切れるようになったという。

「あれこれ考えすぎないで、シンプルに。内野ゴロでも野手が焦ってジャッグルすれば出塁できますから。相手が僕の足を意識すればするほどミスは増えます。バッティングに関しては、シーズン途中に『ピッチャーゴロでもピッチャーが捕れなければ（センターに抜けて）ヒットになる』と気づいてから、気持ちが楽になりました。

　去年の秋は、相手の守備位置を見て『セーフティバントしてやろう』と考えていましたが、今はピッチャー方向か三遊間、ショートの頭の上に強い打球を打つことを考えています。タイミングを合わせてポンと打つイメージができました」

取材は6月13日に実施 ©Tomohiro Motonaga

　プロ野球のあるスカウトは、飯森をこう評価する。

「自分の特徴や役割をしっかりと理解していて、体が小さいことも武器にできる選手。レギュラーになれるかどうかはわからないが、足のスペシャリストとして戦力になる可能性は高い。足の速さに関しては、プロ野球選手の中に入ってもトップクラス。盗塁を狙う時、一発でスタートを切れるのが彼の強み。

　プロのピッチャーのけん制技術、クイックモーションの速さは大学より上なので、レベルの高い相手でも思い切ってスタートを切れるかどうか。そこが課題だと思う」

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