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阪神スカウトらが注目する「古謝樹」って何者? “就活の場”で最速153キロを叩き出す半端ない伸びしろ…急成長のウラに“あの名参謀”
posted2023/06/16 17:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
KYODO
毎年6月に行われる全日本大学野球選手権大会(以下、大学選手権)は全国から集った27校が大学日本一を争うとともに、4年生の選手たちにとっては「就職活動」を兼ねていると言ってもいい。
なかでも「ドラフト候補」と呼ばれる好素材の選手たちにとっては、この“就活の出来”がNPBに進めるか否かだけではなく、ドラフトの順位、ひいてはその順位に応じた数千万単位の契約金が関わってくると言ってもおかしくない。
事実として、2021年大会では西日本工業大の隅田知一郎が初戦の上武大戦で8回4安打1失点14奪三振と素晴らしい投球を見せ、秋のドラフト会議では西武のドラフト1位指名を受けた。また、この試合で隅田から本塁打を放ったブライト健太もこの大会で大活躍を遂げて中日ドラフト1位指名を勝ち取った。昨年の大会では、富士大の金村尚真が初戦の大阪商業大戦で10回を7安打(うち内野安打が4本)2失点(うち1失点はタイブレーク)と好投し、日本ハムドラフト2位指名を掴んだ。
もちろんスカウトたちは、普段の練習やオープン戦、各リーグ戦でもチェックに目を光らせているが、檜舞台である全国大会は編成部の上長や他地区担当スカウトも一堂に会して視察しているだけに、ここで活躍できるかどうかはやはり重要なのだ。
初戦敗退も9回無失点、最速153キロ
そんなプロに入る前の「一世一代のショーケース」とも言える舞台で躍動したのが、桐蔭横浜大の左腕・古謝樹(こじゃ・たつき)だ。
大学選手権初戦の仙台大戦で延長10回の無死一、二塁から始まるタイブレークで犠飛や打ち取った当たりの内野安打で失点を喫し、敗れこそしたものの、9回まで5安打無失点に抑えた。球速も自己最速となる153キロを計測するなどストレートが走り、ツーシーム、カーブ、スライダー、チェンジアップといった変化球もキレ良く決まり、古謝自身も「4年間で一番悔しい試合でしたが、一番成長を実感した試合でもありました」と充実の表情で振り返った。