マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「なぜ野球と縁もゆかりもない大学に…」プロ野球スカウトも注目の196cm、110kg “伊勢のガリバー”が語った「野球の公式」とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byチーム提供
posted2023/07/15 17:01
NPBプロ野球選手はいまだいない皇學館大学所属ながらプロも注目する村田怜音。196cm、110kgの大器だ
皇學館大学。
その、野球とは縁もゆかりもなさそうな大学の野球部に、初めて伺ったのは、もう10年も前になる。
大学野球の監督さんたちを取り上げた書籍に、皇學館大・森本進監督にも登場していただくべく、話を聞きに伊勢まで足を運んだのだ。
森本監督は、宇治山田商高で快足・好守・強打の遊撃手として活躍し、3年の秋には、阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)にドラフト2位で指名された逸材である。結局、その時は指名を断って駒沢大に進学したわけだが、その後は社会人野球でも長くプレーするなど、バリバリの野球人である。
そんな男が野球で名前を聞くことはほとんどない三重県の大学で、学生野球の指導にあたっていることに強い興味を抱いたのがその理由だった。
伊勢神宮にある「皇學館大学」とは……?
伊勢神宮という場所に初めて行った。
皇學館大は、数少ない「神道」の大学である。その伊勢神宮のうっそうとした深い、深い、森の中の一角に、校舎とささやかなグラウンドがあった。
10年前のその頃は、部員も30~40人。主将をつとめる選手が「神道学科」の学生さんで、卒業して宮崎県の青島神社に「就職」したと聞き、2月のキャンプ取材の時に訪れてみたら、(当たり前だが)ほんとうに神主さんの装束で現れた。
「去年まではこればっかりだったのに、今はこっち一本ですよ!」
バットを横に振るしぐさをしてから、今度はタテにバサッ、バサッと大幣を振ってみせ、愉快そうに笑っていたのが忘れられない。
以前は、楽天・則本昂大投手らを輩出した三重中京大の独壇場だった「三重大学リーグ」だが、同学が廃校になってからは戦力差が小さくなり、今は皇學館大が首位の常連になりつつあるようだ。2015年には全日本大学野球選手権にも出場している。
「今年、ウチに面白いのが入ってきたんですよ。ひょっとしたら、ウチから初めてのプロが出せるかもしれません!」
そんな森本監督から「村田怜音(れおん)」という存在を教えてもらったのは、2020年の秋ことだった。