プロ野球PRESSBACK NUMBER
中田翔18歳に激怒「ファンいなくなったらどうするんだ?」千賀滉大らスター“覚醒前”を熱血指導…あの伝説的ロッテ選手・水上善雄の今
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/17 11:01
中田翔、千賀滉大らスター選手たちの“覚醒前”を当時指導した水上善雄に語ってもらった
「『心配だね』と送りましたけどね。『頑張ります』と一言だけ返ってきました。自分に原因があるとはいえ、相当憔悴していたんでしょう。いつもなら、笑いの絵文字が入っているんですけど、ただの文字だけだった。中田の場合は今後ですよ。次、何かやらかしたら、もうダメです」
ソフトバンクへ…千賀滉大が泣いていた
水上は野球教室で繋がりのあった王貞治会長に請われ、2014年にソフトバンクの三軍統括コーチ兼ファーム内野守備チーフコーチに就任。翌年から3年間、二軍監督を務めた。当時のファームには千賀滉大、岩嵜翔、東浜巨などエース級の素材が燻っていた。
「日本ハムの時と比べて、徹底的かつ強制的に練習させましたよ。千賀は心の問題だけだったんですよ。ハートが弱いんじゃなくて、自分を過保護にしていた。プロとして生きていくためには限界を超えるまで練習しないと、能力があっても開花できない。だから敢えて強く当たりました」
水上と千賀はこんな会話を繰り返した。
「今日は肩に違和感があるので、ブルペンには入りません」
「え? だって、遠投してんじゃん」
「いや、ピッチングと遠投は違うんで」
「しっかり腕を振れるってことじゃないの?」
「いや、マウンドに上がると……」
「もういいよ、投げなくて。たくさんピッチャーいるからさ。東浜でも岩嵜でも」
咎められた千賀が涙をこぼす日もあった。
厳しい言葉で自覚が芽生えたのか、2015年の千賀はウエスタン・リーグで16試合に登板して9勝2敗、防御率2.00の好成績を挙げた。翌年から一軍のローテーションに定着し、昨年まで7年連続2桁勝利を挙げ、今年メジャーリーグに挑戦した。
「本人が頑張ったんですよ。いくら指導者が何か言ったところで、自分が努力しなければ、プロで生き残れないですから」