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元ロッテ選手が築地市場でマグロを並べて…本人が明かす“激動の引退後”「パパはなんでいつも家にいるの?」「ハローワークで仕事を…」
posted2023/06/17 11:00
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
Number Web
かつてロッテで活躍した「元プロ野球選手」水上善雄、65歳。現役引退後は「築地市場でマグロを並べる仕事」「コインパーキングの集金」……とさまざまな職を経験した。その歩みをNumberWebのインタビューで明かした。(全5回の4回目/#1、#2、#3、#5へ)※敬称略。名前や肩書きなどは当時
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「引退して、アッという間に貯蓄は尽きました。現役時代によく車を買い替えていたし、今ほど年俸も高くなかったですからね。さあどうしようかと思って、アルバイト情報誌の『an』を見て、築地市場で働くことに決めたんです」
プロの世界に17年間も身を置き、引退直後にコーチの依頼もあった男はなぜ、野球と何も関係ない仕事に就いたのか――。
逃した「ロッテ復帰のチャンス」
1989年オフ、長髪がフロントの不評を買い、水上善雄は広島へ放出された。しかし、同じショートで2年目の野村謙二郎に見込みが立ったため、わずか1年でダイエーに渡った。同じく広島にトレードされた高沢秀昭も新天地で活躍できず、91年のシーズン途中にロッテに舞い戻った。
実は、水上にも古巣復帰のチャンスがあった。ダイエーに移籍した同年、平和台球場のロッテ戦前にサードで守備練習をしていると、通り掛かった金田正一監督がこう言った。
「おお、水上。そろそろ戻ってくるか」
「すいません、もうすぐ1000本安打なので、もう少しダイエーに居させてください」
「そうか。じゃあ、もうないぞ!」
400勝投手の“天皇”は外野へ走り去っていった。
「『ロッテに戻る=引退』と勝手に考えてしまったんですよね。私は1000本打ったら、戻りたいという意味で言ったんですけど、『はい、お願いします!』と答えるべきだった。逆の立場で考えると、もし自分が20歳くらい下の人間を誘って断られたら、『もういいよ』となると思いますよ」