田口　でも、思うように乗れませんでした。「こういう風に抑えれば、馬と折り合いがつくだろうな」というポイントがあるんですけど、踏ん張る力がないからダメで。馬に乗っていない期間があると、それだけ筋力が落ちるんだと思います。

夫の田口輝彦さんは「乗れ、乗れ！」

――旦那さんの反応は？

田口　「乗れ、乗れ！」って騎手復帰をゴリ押しでした。ちょっと変わっているよね、と思うけど、話題になるのが好きだったのかな？（笑）

――出産後も復帰したいと思えるほど、騎手に大きな魅力があったんですね。

田口　調教師や厩務員などみんなで馬を育てて、勝った時の喜びを分かち合うのが楽しかったです。調教していく過程も楽しいし、勝つと馬主をはじめみんな喜んでくれます。勝てない時は「自分のミスで負けちゃった」とヘコんだり、他の騎手に乗り替わると傷つくこともあったけど、それは自分が腕を上げればいいだけです。調教師も私の気持ちを汲んで馬主に頭を下げてくれて、乗せてもらったこともありました。いま思うと、調教師の仕事って本当に大変だなと思います。調教師をしている夫なんかを見ていると、いつも電話が鳴っていて忙しそうだなと。

――夫の田口輝彦さんが調教師になるにあたって話し合いはあったのでしょうか？

田口　夫はレース前になると減量が大変でピリピリして辛そうだったので、「もう辞めた方がいいね」と話し合って、長女が1歳になる頃に調教師になりました。

騎手免許を返上した年に長男・貫太が誕生

――いまでも騎手復帰したいな、と思うことはありますか？

田口　私も痩せていたら乗りたいですよ。調教も乗りたい。けど、太っちゃったし、夫にも迷惑をかけたくないなあ、と思います。厩舎の大切な馬に私が乗って変な癖をつけちゃったらいけないですし、「調教師の奥さん、また落馬してるよ」とか言われたら嫌やん（笑）。長女の2年後に2人目ができて、さらに2年後に3人目ができて「もういいわ」と思いました。ちょうど夫も調教師として軌道に乗ってきたから、私の出る幕もないかな、と思って騎手免許も返上しました。

#2に続く

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