田口　お客さんもたくさん来場して、安藤勝己元騎手（のちに笠松からJRAに移籍）をはじめすごい騎手がいて賑やかな時代を過ごさせてもらいました。調整ルーム（騎手がレース前夜に入室を義務付けられている施設）では先輩たちがお酒を飲んでいると「こっちおいで」と呼んでくれました。勝己さんは穏やかな人で、聞けば何でも教えてくれましたし、ある先輩騎手は「他の人には言ったらアカンぞ！」と言いながらレース中の進路取りの秘訣を教えてくれましたね。ちょっと酔っ払っているから、本当は他人に言わないようなことも教えてくれたんです。本当に可愛がってもらいました。

――競馬のことを色々教えようとしてくださったんですね。当時はまだ男社会の風潮も濃かったと思いますが、そのあたりは？

田口　自分が逃げたかったのに邪魔された、とレース後に怒ってくる先輩騎手もいました。でも、レースは一人だけでするわけじゃないと考えていたので、悪くないのにグダグダ言われた時は無視していましたし、男らしくないなと思っていました。指摘されて「悪いな」と思うことは謝りましたけど、そうでない時はすぐには「すみません」とは言いませんでした。女の子だからって負けたくない、舐められたらアカンと思っていました。でも、今にしてみれば、そんなに構えなくてもみんな優しかったよな、と思いますね。

当時の中島広美ジョッキー　写真は本人提供　©Keiji Ishikawa

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――女性が少ない世界でしたから、無意識に肩肘張っていたんですね。体力づくりなどはどうしていましたか？

田口　走り込みはかなりしていました。若い時は夢いっぱいで、「立派な騎手になるんだ！」って太陽に向かって走っていました。その積み重ねが「これだけ頑張ったんだ」っていう達成感や自信につながっていたと思います。

最低でも10年は続けようと思っていました

――女性騎手が集う「第1回卑弥呼杯」総合優勝や、「インターナショナル・クイーンジョッキー・シリーズ」では大井競馬場で勝利を挙げるなど、通算120勝を挙げる活躍をされる一方、デビューから4年後の1996年には騎手の先輩でもある田口輝彦調教師とご結婚されました。どういうところに惚れたんですか？

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