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競馬PRESSBACK NUMBER
「出産しても、またレースに乗ろうと思っていた。でも…」21歳で笠松の先輩騎手と結婚、“女性騎手1期生”中島広美48歳が語る「復帰をあきらめた理由」
posted2023/06/11 17:00
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph by
Hiromi Taguchi(L)/Keiji Ishikawa(R)
日本では珍しい「母子ジョッキー」。母はどのような現役生活を送り、同じプロの世界に入った息子をどう見守っているのだろうか、話を聞いた。(全2回の第1回/「息子もジョッキーに」編は#2へ)
新聞で見つけた「地方競馬騎手募集」という広告
――田口さんは滋賀県の一般家庭のご出身とのことですが、競馬を知ったきっかけは何でしたか?
田口広美(以下、田口) オグリキャップがドンピシャの世代だったんです。ブラウン管のテレビで見ていて、自分もヒーローみたいになりたいと夢を抱きました。中学3年生になり進路を考えている時、新聞で「地方競馬騎手募集」という広告を見つけて「運動も動物も好き。こんないい仕事があるんだ」と飛びつきました。中学校の先生は諦めさせようと色んな事やっていて、ある時、JRAの栗東トレーニグセンターに連れて行ってくださったんです。けど、むしろ私は「すごーい! 先生、連れてきてくれてありがとう」なんて言って、余計に火が付いちゃいました(笑)。馬にも乗ったことがなかったですし、職員会議で議題に上がったという話を聞きました。
――今よりも競馬界は世襲の時代でしたでしょうし、乗馬未経験の田口さんを先生方は心配されたんですね。地方競馬で騎手になるには、地方競馬教養センターに入所するのが一般的です。一から養成する長期課程は当時、女性の募集はしていましたか?
田口 ちょうど長期課程でも女性を採ろうというタイミングで、女性の1期生として採ってもらえました。すごく運が良かったです。
施設の一部を私のためだけにリフォーム
――そうしてオグリキャップデビューの地・笠松で田口さんもデビューすることになったんですね。
田口 恥ずかしい話、中央競馬と地方競馬があることを知らなくて。中学生の時に連れて行ってもらった栗東トレーニグセンターは中央競馬の施設。すごい所だと思っていたら、笠松はめっちゃ古くて……(苦笑)。