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「出産しても、またレースに乗ろうと思っていた。でも…」21歳で笠松の先輩騎手と結婚、“女性騎手1期生”中島広美48歳が語る「復帰をあきらめた理由」
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph byHiromi Taguchi(L)/Keiji Ishikawa(R)
posted2023/06/11 17:00
最終騎乗は26歳だった中島広美。笠松で通算120勝を挙げた女性ジョッキーが結婚後も続けた騎手を辞めた理由とは…?
田口 優しかったのよ、昔は(笑)。9歳年上で、大人に見えたんですよね。同じ厩舎の馬に乗っていて、まだ気性が幼い若駒に乗る時は危ない面もあるので一緒に併せ馬をしてもらったりしました。
――同じ職場で交際をすることで、何か気を使ったりしましたか?
田口 どうやってみんなに「付き合っています」って伝えたか、忘れちゃったんですよね。1年間同棲して結婚したんですけど、わりとすぐ結婚しました。私が21歳の時で、うちの人は9歳上で年も年だったので。
――デビューした頃、いずれは結婚して辞めようと考えていましたか?
田口 最低でも10年は続けようと思っていました。長期課程の女性1期生として採ってもらったのに、すぐに辞めるのは教官にも申し訳ないと思っていました。騎手はいい時もあれば悪い時もあるけど、女の人は数年で辞めちゃうイメージがあって、それはしないようにしようと思っていました。
結婚後に起きた変化
――その思いもあって結婚後も約4年は騎手を続けていたんですね。結婚したことでの変化はありましたか?
田口 所属の調教師と上手くいかなくなってしまって、あんまり乗せてもらえなくなった感覚があります。なかなか難しいですよね。結婚前はすごく応援してくれていたのが、結婚した途端に引いていく、みたいな。
――アイドルが結婚するとファンが減るような感じなのか、あるいは結婚したことで仕事に全力投球できなくなると思われてしまったのか。
田口 それは分からないですけどね。夫には相談とまではいかないけど、「乗せてくれないねえ」とは話していました。それでも馬に乗るのが好きだから、一生懸命やっていました。そうこうしているうちに、なかなか子供ができなかったのが長女ができて、その後はポンポンという感じで3人出産しました。
大きかった「馬に乗っていない空白期間」
――第一子の出産が01年ですが、03年春まで騎手免許を保持していました。これは……?
田口 出産しても、またレースに乗ろうと思っていたのよ。馬も馬乗りも好きだから、朝は夫のお姉さんに子どもを預けて添い寝をしてもらって、ちょこっと調教に乗っていました。
――えーっ! 出産からほどない頃に調教復帰していたんですか。女性のジョッキーや厩務員が増えた現代でも、なかなか聞かない事例です。