スタンドで歓喜していたメンバー外の選手たちを、イーグルスでは「ライザーズ」と呼んでいる。就任当時のコーチ陣とともに「上昇」の意味合いを込めてつけた呼称だ。3位決定戦後の記者会見で、試合前日練習をやり抜いたライザーズ全員が泣いていたことについてコメントを求められた沢木は「すごくチーム愛が出てきた。みんなで勝ち取った勝利です」と珍しく言葉を詰まらせた。

「涙が込み上げる選手を見れば、僕ももらいそうになりますよ。それは周りのスタッフも一緒です」

2012年に旧トップリーグ昇格後、最高位となる3位となったイーグルス。試合後は笑顔で写真に収まった　©︎JRLO

　かつて12位だったイーグルスは8強、6位とステップアップし、ついには大躍進と言える3位を手にした。就任3シーズン、沢木にとっては納得の結果だったのだろうか。あるいは優勝まで青写真を描いていたのか。沢木はさらりと謙遜する。

「まあ、こんなもんじゃないかなと。優勝はともかくトップ4には入っておかないと、というのはありましたね。やはり優勝ってそんなに簡単じゃない。本当に大変なことだと僕は知っていますから」

　将来的に日本代表監督への就任も期待されるが、今は再びリーグワンの頂点を目指す戦いに目を向けている。

「まだイーグルスでやり残していることがある。一年、一年危機感を持って臨み、指導者として成長していきたいですね」

©︎Yuki Suenaga

　理知的なコーチング、マネジメントを貫く半面、選手の献身に涙する“情”の部分も忘れない。常に学び続ける日本屈指のラグビーコーチとして、沢木はさらなる高みを目指す。

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