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ラグビーの歴史を変えた“雨の3位決定戦”…知将・沢木敬介の涙が証明する勝者マインド「低迷イーグルスが強くなった理由」
text by
齋藤龍太郎Ryutaro Saito
photograph byJRLO
posted2023/06/04 11:02
イーグルスを史上最高位の3位に導いた沢木敬介HC(48歳)。激闘の後、トライを決めたSHデクラークら選手たちを労った
プレシーズンマッチではサンゴリアスを下すなど手応えを掴んで臨んだ2021シーズンの開幕戦。相手は下位が定位置だったNTTドコモレッドハリケーンズ(現NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)だが、イーグルスはラストプレーで逆転負けを喫する。第2節では神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現コベルコ神戸スティーラーズ)に10-73で大敗した。
「あれが当時の実力です。勝つのはそんなに簡単じゃない。それでもチームの変化は少しずつ見えてきていました。ただ結果がついてこないだけ。だから僕はネガティブに捉えてはいませんでした」
その後は勝利を重ねてリーグ戦は3勝3敗。プレーオフトーナメント準々決勝ではパナソニックワイルドナイツ(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)に17-32で敗れ、ベスト8(5位)でシーズンを終えた。
「最後は8強でしたが、そんなに力があるチームでもなかったし(開幕3連敗から)持ち直したという感覚はありません。ちょっとずつよくなっていけばいい。そう考えていました」
「チームは急激に変わるものではない」
リーグワン元年となった就任2シーズン目のイーグルスは、その沢木の言葉どおり成長を見せた。第2節のスティーラーズ戦で55-21と前年とは対照的なスコアで快勝するなど、シーズン序盤から勝利を重ねていった。
「選手一人ひとりのラグビーに対する考えも取り組みも変わってきました。私生活もしかりです。グラウンド内だけでなくグラウンド外でも正しい行動をしないとラグビーのパフォーマンスにも絶対に表れますからね」
目標としていた初の4強入り、すなわちプレーオフトーナメント進出が見え始めた終盤戦、勝負どころとなった第14節はワイルドナイツに、第15節はスティーラーズに連敗。リーグ戦6位でプレーオフ進出を逃した。なぜ失速したのか。沢木は首を横に振る。
「失速とは思っていません。終盤、負けが込んだのは経験のないチームだったからです。ただ、チームは急激に変わるものではない。段階を踏んでしっかり成長できればいいと考えていました」