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オーナーが松井秀喜に口撃「契約したのはこんな選手ではない」ホームランが“消えた”20年前…日本最強バッターが直面“称賛からの猛批判”  

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水次祥子

水次祥子Shoko Mizutsugi

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posted2023/06/02 11:01

オーナーが松井秀喜に口撃「契約したのはこんな選手ではない」ホームランが“消えた”20年前…日本最強バッターが直面“称賛からの猛批判” <Number Web> photograph by Getty Images

20年前、アメリカ屈指の名門球団、ニューヨーク・ヤンキースに松井秀喜が入団した。ゴジラが挑んだメジャー1年目を振り返る

 ゴジラらしい、力強いスイングが影を潜めた。長打が出ないだけでなく、4月下旬と5月下旬には一時的に打率も2割5分台まで落ちた。5月23日のブルージェイズ戦は第1打席に四球で出塁したものの、その後は空振り三振、投ゴロ、投ゴロ併殺打。散々な結果で終えた試合後に松井は言った。

「いつも言っているように、こういう時期は必ずある。早く抜けるに越したことはないけど、前向きにやるしかないです。結果は出なかったけど、1、2打席目のファウルは良いスイング。自分のスイングはできていた。最終的には崩されて凡打になりましたけど」

 話す内容は前向きではあった。一方で、意識的に前を向こうとする姿に、思ったように打てないもどかしさ、悔しさが滲んでいた。

オーナーの口撃「契約したのはこんな選手ではない」

 辛辣なニューヨークのメディアから不名誉なあだ名をつけられたのも、この頃だった。

「グラウンドボール(ゴロ)キング」

 あまりの内野ゴロの多さからだった。

 ニューヨーク・タイムズ紙は「日本で本塁打王に3度輝いたヒデキ・マツイは、圧倒的なゴロヒッターになっている。米データ会社STATSによると、開幕から最初の45試合で彼はゴロ打球をメジャー最多の97も打っている」と書いた。

 メディアだけではない。遂には球団オーナーからも批判が出た。お金も出すが口も出すことで有名な当時のワンマン名物オーナー、ジョージ・スタインブレナー氏が、ニューヨーク・デイリーニューズ紙の取材に「我々が契約したのは、こんな選手ではない」と松井への失望を口にした。5月26日の試合後の発言だったが、たちまちニューヨークで大きな話題となり、翌日の地元紙のヘッドラインを飾った。スポーツラジオのトーク番組でも格好のネタとなった。

 松井の心中はいかばかりだったか――。

〈つづく〉

#2に続く
日本のホームランバッターはメジャーで通用するのか…私が見た松井秀喜“50→16本”の真実「納得はしてないですけど…」「自分を変えていく」

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