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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
オーナーが松井秀喜に口撃「契約したのはこんな選手ではない」ホームランが“消えた”20年前…日本最強バッターが直面“称賛からの猛批判”
posted2023/06/02 11:01
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph by
Getty Images
20年前、メジャー屈指の名門球団、ニューヨーク・ヤンキースにひとりの日本人が入団した。松井秀喜、28歳。「日本最強バッター」の挑戦に日米ファンが熱い視線を送った。どんな成績を残してくれるのか――称賛からの一変、オーナーから名指しの批判、消えたホームラン……当時現地で取材した記者が綴る「松井秀喜のメジャー1年目」。〈全2回の#1/#2へ〉
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今から20年前、ゴジラが海を渡った。
巨人からFA権を行使し、ヤンキースと契約したのは2002年12月のことだった。
松井のメジャー移籍は当時、日本の野球ファンにとって「ロマン」だった。メジャーに挑戦した日本人野手といえばすでにイチローや新庄剛志らがいたが、ホームランバッターがメジャーに挑戦するのは松井が初めてだ。巨人最終年にプロ野球史上8人目の50本塁打を達成した男が、メジャーを舞台にパワーで勝負したら一体どんな数字を残すのか――。
「ゴジラがニューヨークに!」市長も登場
高まる期待はアメリカでも同じだった。
「ゴジラがニューヨークにやってくる」
「世界一有名なチームに加わった、日本最高のスター」
ニューヨークの新聞には、松井のヤンキース入団を伝える見出しが躍った。2002年のシーズン中から日本の最強スラッガーがメジャーに移籍するかもしれないという話は米国メディアでも伝えられており、その存在はすでに知られていた。噂の大物選手が来るという興奮で、ニューヨークは大いに盛り上がっていた。
そうして迎えた入団会見は、前代未聞の華やかさだった。報道陣が500人近くも集まる規模となり、球場ではなくマンハッタンの中心にある巨大なシティホテルの宴会場を借り切って盛大な会見が行われたのは、2003年1月のこと。ジョー・トーリ監督や球界を代表するエースのロジャー・クレメンスも出席し、ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長まで会見に加わった。それほど大きな期待が、松井に集まっていた。