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「ミトマのドリブルにクボの技術、トミヤスの賢さを楽しんでる」JリーグMVP男ペレイラ63歳は今、何を?「ブラジルで日本の学びを…」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2023/05/20 11:02
1994年のMVPトロフィー、1993年と1994年のベストイレブン賞とともに写真に収まってくれたペレイラ
「フットボールはスポーツであり、ブラジルの子供たちは皆、楽しいからボールを蹴っている。プロの世界は非常に厳しいから大変な努力が必要だけど、根底にあるのは楽しさだからね」
ブラジルでは貧困家庭を対象にしたスクールを
――韓国から帰国してからは?
「2006年にブラジルへ戻り、イトゥーの市役所が運営する子供のためのフットボール・スクールのコーチになった。これは、『プロジェット・ソシアル』(ソーシャル・プロジェクト)と呼ばれるもの。プロ選手を育成するのが目的ではなく、貧困家庭の子供たちにフットボールを通じて人間教育をする制度なんだ(注:ブラジルでは、全国各地の市町村で同様の取り組みが行なわれており、プロコーチから無料で指導を受けることができる)」
――どのような体験でしたか?
「少年たちの多くは貧困家庭の出身で、片親がいない子も多い。彼らにボールを蹴る喜びを味わわせ、立派な社会人になってもらいたいと思って、一生懸命に指導した。2008年まで3年間続けたんだけど、私自身にとっても得るものが多く、非常に貴重な経験となった」
――その後も子供たちを指導したのですか?
「イトゥーにあるいくつかのフットボール・スクールでコーチを務めた後、2016年にある実業家から『7人制のコートを造って、子供たちのためのフットボール・スクールを開設したい。責任者となってもらいたい」と頼まれて、この『アカデミア・デ・フッチボール・ヴィヴァウ』(ヴィヴァウ・フットボール・アカデミー)で教え始めた。現在、僕を含めて4人のコーチがおり、4歳から15歳まで200人余りの子供たちを教えている。
週に1回、イトゥーにある日本企業の社員数人にもレッスンをしている。みんなとても熱心で、楽しそうに練習している。雨が降っても絶対に休まない(笑)。また、私の妻と娘もこのスクールの事務所で働いている」
――生徒の中には、プロを目指す子もいるのですか?
「ああ、かなりいるよ。このスクール出身で、すでに数人が近郊のクラブのアカデミーに入ってプロを目指している」
63歳、体が動く限り続けたい
――指導方針は?
「まず、フットボールの楽しさを存分に味わってもらう。また、挨拶などの礼儀、仲間に敬意を払うといった人間教育を重視している。私が日本で学んできたことを実践しているんだ。
この教え方は、子供たちの親にも好評なんだ。ここの人は皆、日本と日本人が大好きで、日本文化を高く評価しているからね」
――今、63歳ですね。コーチの仕事は、いつまで続けるつもりですか?