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突然の辞任にロッテ選手たち号泣…前監督・井口資仁の“兄貴分だけどラインは引く”リーダー像「怒ったことない」「一緒に食事は行かない」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byTatsuo Harada
posted2023/04/29 11:02
昨季まで千葉ロッテマリーンズで5年間、指揮を執った井口資仁がNumber Webのインタビューに応じた。貫いた「リーダー像」とは
「怒ったことないですね。あるかなあ……試合中にぺちゃくちゃ喋っていたら注意しましたけど、プレーに関してはないですね。何か思ったら、全部コーチ経由で伝えていました。監督が怒ったら、選手は『じゃあ直接教えてくれよ』と思う。僕が指導してしまうと、選手はコーチの話を聞かなくなる。監督の言うことさえ聞けば起用してもらえると思われかねないので。だから、1対1での技術的なアドバイスはしなかった。コーチがいる時に、一緒に話す程度に留めていました」
二軍落ちは「直接通告」…なぜ?
井口は5年間、全て自分の口から二軍落ちを通告した。理由を明確にしておきたかっただけでなく、選手への配慮もあった。
「僕の現役時代、コーチに伝えさせる指揮官もいました。その場合、選手のモチベーションが下がっていた。監督自身が『この課題を克服すれば、またチャンスがある』と知らせれば、選手もファームでしっかり練習してくれます。ベテランの場合、本人たちが最も理由をわかっているので、逆に『すいませんでした』と謝られました」
取材中、井口は堂々とした口ぶりで話すが、聞き手に高圧さや威圧感を感じさせない。この雰囲気が選手から信頼を得た理由かもしれない。
若手育成…難しさは「パッと出た次の年」
監督時代、若手を積極的に起用したが、昨年まで真のレギュラーと呼べる選手はほとんどいなかった。5年間で、規定打席に達した選手は延べ22人。最高は5年連続の中村奨吾、次に3年連続(2018年~2020年)の井上晴哉。2年連続以上の到達は、他にマーティンと鈴木大地しかいない。
「1年パッと出てくる選手はいるんですけど、次の年が本当に大事なんですよね。そこをしっかりできると、5年ぐらい安泰になる。良い年と悪い年が交互に続いてしまうと、首脳陣からの信頼も得られなくなる」
現役時代、あのイチローを「隠し球」で…
井口は現役時代から自分に妥協せず、グラウンドでも常に目を光らせていた。まだ主力とは呼ばれていない3年目の1999年、福岡ドームでのオリックス戦でイチローを隠し球でアウトにしている。先輩であり、球界の大スターに対してやりづらさはなかったか。