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まさかの5失点大敗…名門・鹿島で何が起きている? 岩政監督「野心はない」発言の誤解…番記者が見たウラ側「昌子は嫌われ役、植田は怒り」
posted2023/04/22 11:02
text by
内田知宏(スポーツ報知)Tomohiro Uchida
photograph by
Masahi Hara
鹿島が苦しい戦いを強いられている。今季は神戸にホームで28年ぶりとなる5失点の大敗を喫するなど、ここまで15位に低迷。7シーズンぶりの国内タイトル奪還を目指し、昨季途中からクラブOBきっての策士、岩政大樹を監督に据えたが、歯止めがかからない。
今年5月に3O周年を迎えるJリーグにあって、8度のリーグ優勝を数える名門。勝負強さが憎らしく思われる一方で、他クラブから手本とされていた。その鹿島に今、何が起きているのか。
岩政監督が口にする「ツケ」とは?
岩政大樹は「ツケ」という言葉を用いて、現状を分析する。現代サッカーへの適応が遅れた、という意味でとらえることができる。後方からのビルドアップで攻撃を組み立てる。ポジショニングでスペースを作りながら、タイミング良くパスを差し込んで、相手陣内へと入っていく。こうした戦術の時流に乗り遅れ、着手できなかったことが「ツケ」となって、クラブワーストとなる6シーズン国内主要大会無冠の状況を引き起こした。
理由は明確だ。クラブはOBの日本人監督で黄金時代を築く、という野望を持っていた。かつてジーコが「献身・誠実・尊重」のスピリットでチームの土台を作り、レオナルド、ジョルジーニョらの現役ブラジル代表が「勝利の哲学」を叩き込み、小笠原満男ら日本人選手が定着させた。クラブは監督人事でも同じ絵を思い描いた。強みである「勝負強さ」を引き継ぐために、日本人の指導者を育て、自給自足で維持していく。それが目指す道だった。
実際に石井正忠(2015年途中~17年途中)、大岩剛(17年途中~19年)と日本人を積極的に起用した。クラブからのリクエストは、タイトル獲得と「鹿島イズムの継承(=勝利にこだわる姿勢、勝負強さ)」。だが、それは身につけるためのレシピが存在するものではない。結果を残すことで、育まれる側面がある。裏を返せば、結果が出ないと積み重なっていかない。
主力の海外流出に伴い、戦力は他クラブからの獲得に頼らざるを得なくなった。「鹿島に来れば、勝ち方が分かる」と移籍を選んだ選手たちには特に伝わりづらく、次第に選手側から「戦術」「策」を求める声がフロントに届くようになった。