理由の一つは、瓜野はコーチではないからだ。

「自分の立場はしっかりと把握しているので。コーチは責任を取る立場ですけど、僕らは責任は取れない。だから無責任な言葉は言えないかなと」

　もう一つの理由は、「ピッチャー自身が自分で考えないといけない」と思っているからだ。

「聞かれたら答えられるようにはしていますが、1から10まで手取り足取り教えていたら、自分で戻すということをできなくなってしまうので。どうにもならない時も、細かく伝えるんじゃなく、『ここちょっとこうなってないか？』という感じで、選手自身がハッと気づけるような言葉の選び方に気をつけています。そのあたりは歴代の投手コーチの方などに教えてもらいましたね」

　何か気付いた時には、投手コーチに相談するなど、ワンクッション置くことが多い。

「昨年だったら能見（篤史）さん（昨年まで選手兼任投手コーチ）に、『いい時ってこういうふうになっていたんですよね』みたいな話をしたり、癖を見つけたらスコアラーさんに伝えたり。別に僕が見つけたということを選手に伝えてほしいとも思わない。選手が結果を残してくれたらそれでいいので」

　そうした日々の努力や献身は選手にしっかり伝わっていた。

　7年間ともに過ごした右腕の近藤大亮は、「すごく周りを見てくれる人で、僕らがどういうピッチャーかということをちゃんと分析してくれて、その人にとってベストの答えを持っていてくれる。ウリさんがいるだけで安心できました」と感謝する。

「めちゃくちゃキャッチングがうまい」

　もちろん選手を気持ちよくマウンドに送り出すための技術も磨いてきた。

　近藤は「めちゃくちゃキャッチングがうまい。すごい技術だと思います。朝イチから相当練習していたし、努力家なので、尊敬していました」と続けた。

　昨年終盤、重要な場面でリリーフを任された宇田川優希もこう語っていた。

昨夏は育成契約だった宇田川優希。侍ジャパンの一員としても活躍した背景には瓜野らのサポートがあった　©︎Naoya Sanuki

「キャッチングが良すぎて、（調子が悪い時でも）『調子いいんかな？』と思っちゃうんです（笑）。でも調子が悪い時はちゃんと言ってくれる。『いつもより球は来てないけど、大丈夫だから。いつも通りいけ』って。話しやすいし、聞くと細かく答えてくれるので、すごく信頼していました」

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