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猛牛のささやきBACK NUMBER
山本由伸が信頼した「ウリさん」とは何者? 13年間オリックスを支えた“裏方のプロ”が最後の約束「世界一のピッチャーになってくれ」
posted2023/04/10 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sumitsugu Urino
今季から活躍の場所をソフトバンクに移した男は、なぜ信頼を勝ち取ることができたのか。なぜブルペン捕手という道を選んだのか。NumberWebでは、その軌跡に迫るべくインタビューを行った。全2回の1回目(#2につづく)
2月のオリックスキャンプ。昨年までブルペンに当たり前にあった姿が今年はなく、寂しさを感じた。オリックスで13年間ブルペン捕手を務めた、瓜野純嗣である。
選手から「ウリさん」と呼ばれて慕われ、絶大な信頼を寄せられた。
左腕の田嶋大樹もその1人だ。
「めちゃめちゃ寂しいです。僕を支えてくれた1人なので。ウリさんは筋が通っている人。一生懸命に、いつも選手を見てくれていて、すごく助けてもらいました」
その言葉に瓜野の生き様が凝縮されている。
ナイターの日でも朝から球場入り
「裏方のプロフェッショナルになる」
その矜持のもと、瓜野は選手に、チームに尽くした。
「球場に13時間近くいるブルペンキャッチャーってたぶんいないんじゃないですかね」と笑っていた。
ナイターの日は、朝9時50分には京セラドーム大阪に到着。選手が来る前にトレーニングルームで自身のトレーニングを行い、その後2時間〜2時間半ほどビデオ室にこもって自チームの投手の映像を確認する。
投手のいい時の映像をインプットしておき、ブルペンで受ける時に、いい時との誤差がないかを確認できるようにしたり、調子が上がっていない投手の映像を、良かった時の映像と並べて見て比較するなど、その日必要だと思う映像を頭の中に刻み込む。
その後トレーナーに、選手の体の状況などを確認する。
「どこか痛いと言ってませんでしたか? とか、ここの動き悪くなっていませんか? とか、世間話程度にですけど確認作業をして、いろいろなところから情報を入れておきます。そういう情報と、自分がボールを捕っている感覚を噛み合わせながら、ピッチャーをその日の最善の状態でマウンドに送り出してあげたいので」
ただ、そうした準備の上で、ブルペンで球を受け、何か気づいたとしても、それを瓜野のほうから投手に直接伝えることはあまりない。