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「ちゃんと知っていたのは…」トラウト斬りの20歳・高橋宏斗が帰国後に明かした驚きの本音 「嵐」二宮をも魅了した“ブルペンの迷い猫”が隠す爪と牙
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/04/10 17:00
大舞台で大きな仕事をやってのけた。期待の高橋宏斗はまだ20歳だ
しかし、高橋がすごかったのはこの先かもしれない。ノーラン・アレナド(カージナルス)にレフト前に運ばれ一、二塁。迎えたのはカイル・シュワバー(フィリーズ)。三振も多いが、昨シーズンの本塁打王である。当たれば逆転3ラン。恐れてはいなかったが、力んだのかもしれない。たて続けに外れ、3ボールになった。
振ってくる。誰もがそう思っていた。スプリットで空振りを誘うか。それともストレートの力を信じるか。捕手の中村悠平は高橋が置きにくることはないと信じたのだろう。高橋も勝負の1球だと自覚して95・8マイル、2112回転のストレートを投げ込んだ。打った瞬間、アウトだと確信するセンターフライ。高橋は20球を投げきった。
栗山監督が明かした高橋選出の理由は…
ゴールドシュミットとシュワバーを打ち取った球だけでなく、高橋のストレートは常時150km台中盤をマークするが、回転数はNPB平均より少ない。大谷クラスだと2500~2600回転ということもあり、二軍でも結果が出なかった1年目はコンプレックスを抱えていた。しかし、大切なのはスピンの量ではない。2年目にフォームを修正したことで回転の質が一気に良化。バットを押し込む威力が増した。それに伴って、日増しに自信が高まった。まだ一軍で投げ始めて1シーズンの高橋を侍ジャパンに選んだ理由を、栗山監督はこう語っている。
「若いけど四球で崩れない。そして投手にとって一番大切なものをもっている。マウンドに上がった時、絶対に打者をやっつけるんだというね」
決勝のマウンドでも「緊張で覚えていない」と言いながら、1球ごとにマウンドから数歩下り、中村からの返球を求めていた。オレにボールを寄越せ。オレがゲームを支配する。それが「投手にとって一番大切なもの」。相手が誰であろうと関係ない。帰国後に明かしたことだが、対戦した5人のスーパースターの中で、末っ子侍がちゃんと知っていたのは「トラウトさんだけ」だったそうだ。
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