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「ちゃんと知っていたのは…」トラウト斬りの20歳・高橋宏斗が帰国後に明かした驚きの本音 「嵐」二宮をも魅了した“ブルペンの迷い猫”が隠す爪と牙
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/04/10 17:00
大舞台で大きな仕事をやってのけた。期待の高橋宏斗はまだ20歳だ
この「迷い猫」は、思わぬ縁を生み出した。嵐の二宮和也がツイッターで「迷子の高橋君最高だったな」と反応。さらに翌日の優勝後、チームはシャンパンファイトを行ったが、直前にチームスタッフから「アメリカでの飲酒は21歳から」と告げられ、20歳の高橋は輪の外で水を飲み、動画を撮影しながらの参加となった。それを知った二宮から、所属事務所を通じて高橋が住む選手寮にシャンパンが贈られた。そのお返しの意味を込めて、高橋がヤクルト戦でマウンドへ上がる時の登場曲に選んだのが二宮の「それはやっぱり君でした」だったのだ。
迷い猫→ツイッター→シャンパンファイト→シャンパン贈呈→楽曲使用……。WBCが生み出した最年少侍とトップアイドルの絆。それだけWBCの注目度が高かったということだが、この迷い猫、投手としての能力は爪も牙も鋭いトラである。
それを証明し、全米のスカウトマンを魅了したのはアメリカとの決勝戦だった。この試合のラスト2イニングをダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平で締めくくることを決めていた栗山英樹監督だが、そのためには7回までリードもしくは僅差で持ち込まねばならない。結果的には7投手で9イニングをつないで勝ち切った。この間、同じ投手が同じ打者と複数打席対戦したのは先発の今永昇太(DeNA)とムーキー・ベッツ(ドジャース)だけ。あとは1度きりの対戦を侍投手が制しながら、大谷とマイク・トラウト(エンゼルス)の最終決戦へと進んでいった。
20歳の右腕が“MVP男”をなで斬り
高橋が任されたのは5回。直前の攻撃で岡本和真(巨人)のソロが飛び出し、2点リードとなっていた。しかし、打順は1番のベッツから。初球が高く弾む不運な三塁への内野安打となった。ここでトラウトには2ボールと不利なカウントになったものの、3球目のスプリットで空振りを取った。4球目はストレートでファウルを奪い、カウントを戻す。決着がついたのはフルカウントからの7球目。89・3マイル、1488回転のスプリットでMVP3度のアメリカの主将を打ち取った。
続いてポール・ゴールドシュミット(カージナルス)。昨シーズンのMVPである。こちらは3球連続のストレートで追い込み、決めにいったスプリットは見送られたが、5球目に96・8マイル、2090回転のストレートを外角低めに突き刺し、ゴールドシュミットのバットに反応を許さなかった。