情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
肩書きは「風゜呂(プロ)サッカー選手」プラチナ世代の元Jリーガー・高野光司(30歳)はなぜ”裸一貫”の覚悟で銭湯をPRするのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/04/09 11:13
元JリーガーでU-17W杯にも出場した高野光司(30歳)さん。現在は「すえひろ湯」で働き「風゜呂サッカー選手」の肩書きをもつ
日ごろは正午前後から掃除やお湯の入れ替えなど仕込み作業を念入りに行なって、午後3時のオープンに間に合わせる。衛生管理、清潔が最も大切なことだと高野は言う。ボイラー室の調整を終えると一度「中休み」に入って、夜からは番台にも立つ。
「オープンから夕方までは地域に住む年配の方が中心にやってきて、夜からは仕事帰りの人や友達同士で電車を使ってわざわざ入りに来てくれる人やカップル、深夜になるとのんびり入りたいと思ってやってくるお客さんが多いですかね。この仕事の醍醐味は、お客さんがサッパリした表情になって帰っていくこと。“気持ちよかった”との声が聞こえてくると、やっぱりうれしくなりますよ」
”裸一貫”の覚悟で「風゜呂サッカー選手」へ
深夜1時に閉店してから自分も湯船に浸かった後で片づけをしつつ、大量のタオルを洗濯機で回す。家に戻って寝るのは午前3、4時になるという。
仕事の合間を縫って、サッカーもやっている。東京都社会人2部リーグのFC.Griffin東京に所属して試合にも出場している。「中休み」でサッカーをして帰ってくると、疲れて「睡魔との戦いにもなったりします」。地域の子どもたちにサッカーを教えることもある。風呂とサッカーをセットにした日々を送っている。
サウナブームの追い風があるといってもガス代の高騰などもあって経営は決して楽ではない。それでも子どもたち、若い人たちに良さを知ってもらって、銭湯の文化を守っていきたいとの使命感に似た思いが高野にはある。
それを手助けしてくれるのが、ずっとやってきたサッカーだ。
「銭湯をPRするイベントなどもやっていきたいと考えています。お世話になった沼津や鹿児島にも知り合いがいるので、相談してみたいな、と。サッカーをしている子どもたちにも銭湯で心と体をリセットできた自分の経験も伝える機会があれば、そうしたいなと思いますね」
“裸一貫”の覚悟と、先頭に立って銭湯をPRする気概と。
「風゜呂サッカー選手」の肩書きがいつかしっくりとくるようになると信じて、きょうもサッパリの顔を見届けている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。