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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「なめてんのか、お前!」古橋亨梧が興国高監督に怒鳴られた日…欧州で大ブレーク、スピードスターの覚醒秘話「あいつは孫悟空みたいなんです」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byGetty Images
posted2023/04/09 11:06
スコットランドリーグで日本選手初の得点王が期待される古橋亨梧。今の活躍に至るまでの歩みは決して順調ではなかった
内野はスペイン流のパスサッカーと、徹底的に個を伸ばす指導で興国を「関西のバルセロナ」と呼ばれる強豪校に引き上げた。2006年の監督就任以来、古橋を含め29人もの教え子をJリーグに送り出してきたカリスマ指導者が“孫悟空”と出会ったのは、14年前のことになる。
あの選手、おもしろいじゃないですか
2009年夏、興国高校のグラウンドで、同校とアスペガス生駒FCのジュニアユースチームとの練習試合が行われた。そこに、中学3年のスーパーサイヤ人がいた。高校生相手に何本もゴールを決めたわけではない。ボールタッチが多かったわけでもない。それでも、爆発的なスピードで愚直にディフェンスラインの背後を狙い続ける少年の姿が、内野には「金色」に光って見えた。
「たしか8人対8人のゲームでした。うちのグラウンドはコンパクトだし、高校生が相手となれば、なかなかディフェンスの背後へのパスは通らない。それでも亨梧は、たとえボールが来なくても背後を狙い続ける。その動き出しが、とにかく目についたんですよね。
高校卒業後にプロになる選手たちを初めて見たとき、僕には他の選手が白黒で、その選手だけがカラーで、金色に見えるような感覚があります。亨梧の動き出しも、すごく光って見えた。それで試合中、アスペガス生駒の監督さんに『あの選手、おもしろいじゃないですか』って伝えたんです」
160cmそこそこ、細身も「スピードと技術が大事」
圧倒的テクニックか、図抜けたフィジカルか。一般的に中学年代の選手が進路を決める際には、自らドリブルで仕掛けて次々と敵を抜き去る技術や、中学生離れしたフィジカルの強さが評価されがちだ。体格の小さな選手はハンディを負うことになる。当時、160cmそこそこの身長で線も細かった古橋も、その例に漏れず。奈良県トレセンから落選し、関西の強豪校の練習会に参加しても、なかなか声がかからなかったという。
しかし、内野にとって体の大きさは関係なかった。