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ヌートバー母「WBCはラーズの甲子園」土まみれで全力疾走、球場が揺れたダイビング…大活躍のウラに母の直言「日本のしきたりになれなきゃ駄目よ」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNanae Suzuki
posted2023/03/11 11:03
ヌートバーが日本に到着したのは3月2日だから、日本代表に合流してまだ10日ほど。にもかかわらず、 なぜこれほど早く日本代表、そしてファンから受け入れられたのか。
「裏表がまったくない性格っていうんですかね。誰に対してもどこにいても、本当に人が変わらない。外面がいい、とかもまったくないです。(出身地・)カリフォルニアの土地柄なのかなぁ」
ほかにヌートバーのこんな“お調子者エピソード”も。
「小学生の時かな、ラーズと友人が話してる内容が聞こえてきたんですよ。その子が『クミは日本人だからラーズも日本語喋れるでしょ』って言ったら、『うん、わかるよ』ってドヤ顔。何を言ってんの、話せないじゃんと思ったら、『うんち』『おしっこ』みたいな単語を教えてて(笑)。そしたら、その友だちも単語の意味まではわからないので『本当だ! ラーズは基本的な日本語は話せるんだね』みたいな意味のわからない会話をしていました。そういったお調子者な性格は今も変わらない」
母・クミさんの「子育て論」
そんな根っからの明るさが日本代表で愛される理由だろう。加えて、久美子さんの教えが根付いていたことも大きいと思われる。以下、久美子さんが明かしていた子育てのエピソード。
「国によってしきたりがある。自分が今までやってきたことでも、向こうに行ったら日本のしきたりになれなきゃ駄目よっていうのは伝えました」
「時間厳守は小さい頃から言い聞かせてました。今も子どもたちがよく言うんですけど、時間に遅れて私が怒ったときは『怖かった……』って(笑)。門限の時間も決めて、五分前とかになると子どもたちみんなダッシュで帰ってくる、みたいな」
「ラーズが幼い頃、日本の野球についての話を聞かせる時に、無意識にマナーみたいな面も伝えていたみたいで。甲子園では全力疾走する選手ばかり、挨拶とか礼儀もちゃんと教育されてる……と。日本の野球番組を見せたこともありましたね」
このWBCはラーズにとっての甲子園なんじゃないかって
振り返ればラーズ9歳時、ヌートバーファミリーがホームステイ先として受け入れた高校日本代表選手との交流を通じて「日本野球への憧れ」が強まった。
あれから15年あまり、日本代表にヌートバーがいる。気迫のダイビングキャッチからすぐさま立ち上がる守備意識、ゴロに倒れても全力疾走、ヒットを打てば渾身のガッツポーズ、自打球を心配する首脳陣に“交代拒否”してプレー続行志願……。かつてヌートバーが憧れた甲子園球児を思わせるひたむきさに、ファンの心は一瞬にして奪われた。
勝利を収めたWBC開幕戦後、久美子さんに「周囲にヌートバーファンが急増中ですよ」とメッセージを送ると、こんな返信があった。
「うれしい……。わたし思ったんです、このWBCはラーズにとっての甲子園なんじゃないかって」
連日繰り広げられる激戦。球場でひときわ大きな歓声を集めているのは、ほかならぬラーズ・ヌートバーである。
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