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WBC選手採点“5/10点”に「Numberおかしいわ!」…糸井嘉男が明かす“日本の4番がバント”の本音「当然じゃないですか?」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/08 11:00
2013年WBCに出場した糸井嘉男が明かす舞台裏
0-1の3回。1アウト一、二塁のチャンスで内角低めのストレートをコンパクトに振り抜く。この同点打が会心のタイムリーだったと、今でも糸井が自信をのぞかせる。さらに嬉々として挙げたプレーが、2-3と1点ビハインドの8回、ノーアウト一塁の場面だ。
4番バッターが、相手ピッチャーがモーションに入ると同時にバットを水平に構える。初球。完璧にバントを決めた。糸井の繋ぎで得点圏にランナーを進めると代打の井端弘和の同点タイムリーで打線に火がつき、この回一挙3点。日本が逆転でブラジルを下した。
「タイムリーもそうやけど、あのバントもよかったなぁ。責任あるところで使っていただいたんで、とにかく頑張りました」
振り返ればこの大会、糸井とバントは密接な関係にあった。
第2ラウンド初戦の台湾戦。5番バッターとして出場した糸井は、1点を追う8回、ノーアウト一、二塁のチャンスで送りバントを敢行するも、相手の好フィールディングもありランナーを憤死させてしまう。
バント自体は悪くなかった。だが、「失敗」という結果が糸井の記憶を曖昧にする。
「あの試合はずっと追ってた緊迫の展開で、9回2アウトまで負けてたでしょ。正直、負けもよぎったけど、井端さん、打ってくれてね。ずっと『みんながなんとかしてくれる!』って信じてたから、自分のことはあんまり」
土壇場で井端のタイムリーで同点とし、迎えた延長10回。ノーアウト一塁で打席を迎えた糸井は、低めの変化球や外角ストレートを落ち着いて見極めてフォアボールを選んだ。そこから坂本勇人がバントを決め、1アウト二、三塁から中田翔の犠牲フライで勝ち越し、日本は激戦をものにした。
「空回りしてもええんや」と思ってました
台湾戦の8回のプレーをミスだとするならば、10回の選球でしっかりカバーしたように、一喜一憂しない糸井がいた。続くオランダ戦で特大ホームランを放ったかと思えば、次の試合でも同じ相手に3四死球。その背中は常にチームプレーを訴えていたのだ。
そんな糸井は、プエルトリコとの準決勝でも結果として“バント”を決めている。