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「お前、今いい目してるね」西岡剛が明かす“イチローさんの激励”…21歳だったWBC、阪神でリハビリ中に…「自分の成長を感じられる」
posted2023/03/06 11:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Shigeki Yamamoto
これまで4回開催されてきたWBC。メジャーリーガーが多く参加し「史上最高レベル」ともいわれる今大会を前に、過去の代表選手たちにインタビュー。イチローの存在、世紀の誤審、奇跡の準決勝進出……第1回大会の舞台裏を西岡剛(北九州下関フェニックス監督)が明かした。(全2回の#1/#2へ)
西岡剛が盛大にうなだれてみせる。
「この1回、無駄っすわぁ」
それは、およそ4年ぶりの再会だった。
ほとんどの人間からすれば僥倖でも、西岡にとってその邂逅は不意打ちでしかなかった。そのことを正直に告げると、イチローは大笑いしていたという。
「僕にとってイチローさんは、それくらい価値のある方なんです。お会いするならちゃんと日取りを決めて、心の準備をしてからじゃないと意味ないんです。そりゃあね、野球人としてはしょっちゅうお会いして練習とか一緒にしたいですけど、たまに会ってお話しさせていただくからこそ、自分の成長を感じられるんで。それくらいの存在なんです」
関西出身の西岡にとってイチローとは、少年時代からのスーパースターだった。
オリックス時代の1994年に、当時のプロ野球記録となる210安打を記録したシーンは鮮明に覚えているし、自分の部屋にポスターを貼るくらい憧れていた。
プロとなり、交流できるようになってからは救われることもあった。阪神時代、怪我からのリハビリに尽力しているさなかに「お前、今いい目してるね」とイチローから言ってもらえたことが、西岡の支えになった。
言葉、振る舞い。イチローの全てが、西岡にとって貴重なのだ。だからこそ、その「1回」を不意に失いたくなかったのである。
奮い立った「イチローの言葉」
ふたりの関係性のはじまりは、2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だ。西岡にとってこの大会は、野球人生の大きな分岐点でもあった。
「野球の真の世界一を決める大会」
大会前年の05年にロッテでショートのレギュラーとなり、41盗塁でタイトルを獲得するなど日本一に貢献した。そんな21歳のスピードスターはしかし、当初は「真の世界一」を謳うWBCの重みをさほど感じていなかった。
「王(貞治)さんが監督をされてイチローさんが出られるすごい大会。それぐらいの感覚です。世界一を獲ったら何が起きるのかもわかっていなかったくらいで。ロッテで盗塁王は取りましたけど、打率は2割6分8厘で打ってなかったし、『代表に選ばれたとしてもサブやろうな』と思ってましたね」
西岡が言うように、未知数の国際大会は最初から大盛況だったわけではなかった。