野球のぼせもんBACK NUMBER
WBC緊急招集の日は“内野で練習”も…牧原大成で「外野手不足は解決」なのか? 取材後の“ひと言”「笑えないです、大事な大会なので」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2023/03/02 11:13
サプライズ人選と言っていい。ただ、野球ファンよりも当の本人が一番驚いているように見えた
「最初、(球団からの)電話に気づかなかったんです。ただ、何度も着信が残っていてかけ直すと『すぐに来てくれ』と。その時点で予感はありました。だけど、実際に伝えられると、迷いました。正直、行かない方がいいのかなという気持ちも強かった。今年はホークスでレギュラーを獲りたいという気持ちがすごく強かったので」
WBCに参加すれば、最大で3週間近くチームを離れることになる。当然チームのオープン戦には出られない。その間に、ほかの外野手が猛アピールに成功したら自分の居場所がなくなるかもしれない……。
一晩熟考し、朝もチームメイトとは別に早めに球場へ来た。1人で考え、決断した。
「これからの野球人生とか、自分の人生を考えればこの経験も1回しておいた方がいいのかな」
一人の野球人として、これ以上栄誉なことはない。決意を固めた。
「外野手足りない問題」は解決される?
当初、鈴木の故障が報じられてすぐは代替選手の有力候補として近本光司(阪神)や西川龍馬(広島)の名前が報じられた。もしくは鈴木と同じ右打ちの外野手で松本剛(日本ハム)の名も挙がっていた。
そもそも今回の侍ジャパンは当初から外野手不足が懸念されていた。そこに加えて鈴木の辞退である。牧原は登録上では「内野手」である。
ただ先述したようにユーティリティプレーヤーであり、昨季に関していえば中堅手での出場が最も多かった。しかもピカイチの守備力を誇る。記憶に新しいプレーでいえば2月25日、奇しくもソフトバンクの一員として出場した宮崎での侍ジャパン戦だ。3回裏2アウト2塁、源田壮亮が鋭く打ち返した打球は左中間のほぼど真ん中へライナーで飛んだヒット性の当たり。これに牧原は素早い動き出しから一直線に落下地点へ猛ダッシュし、見事なダイビングキャッチ。侍ジャパンの得点を阻止する超美技を披露した。
また、昨年のクライマックスシリーズ・ファイナルでは6回2死二、三塁の場面で、センター後方への大飛球を必死にフェンス方向へ下がって追いかけて落ちるか間際のところで膝から倒れ込んでキャッチ。ボールは離さず、見事にアウトとした。
ただ足が速いだけでなく、打球への入り方の巧みさ、そして球際の強さは間違いなく球界トップレベルである。
侍ジャパン入りを決めた3月1日のシートノックでも三塁を守っていたが、次のようにコメントしていた。