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WBC緊急招集の日は“内野で練習”も…牧原大成で「外野手不足は解決」なのか? 取材後の“ひと言”「笑えないです、大事な大会なので」
posted2023/03/02 11:13
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Sankei Shimbun
サプライズ人選と言っていい。ただ、野球ファンよりも当の本人が一番驚いているように見えた。
左わき腹を痛めてWBC出場辞退となった大リーガーの鈴木誠也に代わって侍ジャパンに緊急招集されたのは、ソフトバンク・牧原大成(30歳)だった。
「自分でいいのかな……というのが、正直な感想です。すごく不思議な気持ちです」
打診→決定までの一夜「寝られなかった」
2月28日に球団へ連絡が入り、その夜に藤本博史監督からキャンプ地・宮崎のチーム宿舎で侍ジャパン入りを打診された。
「寝られなかった」
WBCに出られるという興奮や喜びとは違っていた。牧原は昨季、プロ12年目にして自己最多の120試合に出場。規定打席にわずか2つ届かなかったが、打率.301をマークした。「ジョーカー」の愛称はソフトバンクファンにはすっかりお馴染みだ。藤本監督の構想ではもともと、牧原は控えだった。いや、その表現は失礼だ。スーパーサブである。
ジョーカーの名づけ親は藤本監督だ。トランプの中に含まれる特別なカードであるジョーカー。役割は非常に多様で、ゲームによっては最も重要な万能カードとして重宝される。すなわち手札にジョーカーを持つことが勝利の近道となる、最強の切り札。
開幕当初は代打、代走で存在感を示し、守備固めでは色んなポジションを守った。その後怪我人が出たこともあり、牧原はスタメン機会を増やした。打順は1、2、3、5、6、7、8番とじつに7つの打順を任された。ポジションも二塁手、三塁手、遊撃手、中堅手を守り、1試合の中で複数ポジションを務めるのも珍しくなかった。
「こうして様々な打順も複数ポジションもやれる選手って他に沢山いるわけじゃない。1つのポジションで輝くのもいいけど、今の役割は自分にしかできないという誇りは持っています」
昨季はそのように話していたが、シーズンが終わると心境が変わっていた。今季に向けてはずばり「脱・ジョーカー」、つまり不動のレギュラーを掲げて、並々ならぬ覚悟で自主トレから準備をして今春のキャンプも過ごしてきた。
実際に伝えられると、迷いました
そんな中での侍ジャパン招集はまさに青天の霹靂だった。