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〈久保建英ソシエダ月間MVP〉敵地で憎まれるのは名が知れた証拠だが…「クボへの徹底マーク」と“1枚も撮れなかったシーン”とは 

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中島大介

中島大介Daisuke Nakashima

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2023/03/01 11:02

〈久保建英ソシエダ月間MVP〉敵地で憎まれるのは名が知れた証拠だが…「クボへの徹底マーク」と“1枚も撮れなかったシーン”とは<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

獅子奮迅の活躍を見せてきた久保建英だが、バレンシア戦の敗戦はラ・レアルにとっても正念場が来たと言えそうだ

 しかし、クラブレジェンドの新監督就任をキッカケとしたい元名門が、徐々にゲームをコントロールし始める。バレンシアはもともと個の能力では引けを取らないだけに、満員の怒れるパワーに後押しされるように、鋭い出足でソシエダのパスワークを分断する。

 久保の前には、負傷のガヤに代わって出場するラトが立ち塞がった。序盤こそ後手に回ったが、3節連続MOMの活躍の久保に自由を与えず、1対1の局面でも身体を張って好機を作らせなかった。

 久保には、ラトだけでなく常に2人目のDFがカバーにつくなど、徹底した対策が取られているように思われた。それでも個人で2人を相手に抜き去ろうとする久保の個人技の高さを感じることはできたが、シルバの不在、また久保の後ろに位置するバレネチェアが本職のサイドバックではないなど、サポート不足の裏返しでもあった。

久保のトップ下移動が結果として仇となったワケ

 うまく噛み合わないソシエダのメンバーを見ると、久保とメンデスが話し合う様子や、また久保とオヤルサバルがポジションをチェンジするなど試行錯誤する様子が撮れた。さらには、前半のうちから右サイドバックのソラがアップを始めるよう指示されており、チームが機能していないとイマノル監督が感じていることが見て取れた。

 37分、そのイマノル監督が久保を呼び寄せて何かを告げる。久保から指示が飛び伝わると、ソシエダはシステムを変更、久保はトップ下に移動した。

 結果からすると――これが仇となった。直後の40分、相手の右サイドにかけたプレッシャーをかわされ、一気に逆サイドへ展開されると、そこからカウンターを受ける。最後は必死にクリアに戻ったスベルディアが自身のゴールへ蹴り込み先制を許してしまった。

 守備時には久保がカバーしていたゾーンだったが、システム変更とともに、そこをつかれてしまった。また後半頭より、バレネチェアが交代しているが、交代策も後手に回ってしまったといえる。

 トップ下に入った久保に対しては、ボランチのウーゴ・ギジャモン、ムサなどが徹底マーク。スタジアムが一体となって勝利を目指すバレンシアを押し返すだけのパフォーマンスを見せることはできず、73分、ピッチを後にした。試合を通してシュートを打つこともできなかった。

ポジション変更によって“撮れなくなったプレー”とは

 スタジアムを包む空気も、序盤はサポーターの怒りの色が強いように感じていたが――終盤が近づくにつれ、また勝利が近づくにつれ、降格圏に沈むチームのものとは思えない、スタジアムが一丸となって戦うものになっていった。ソシエダの必死の反撃もこの空気を変えることはできず、試合は、ソシエダのオウンゴールの1点のみで終わった。

【次ページ】 バレンシアと言えば久保リーガデビューの地に加えて…

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