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〈久保建英ソシエダ月間MVP〉敵地で憎まれるのは名が知れた証拠だが…「クボへの徹底マーク」と“1枚も撮れなかったシーン”とは
posted2023/03/01 11:02
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
地中海沿岸に沿って走る列車に揺られ3時間弱、バルセロナよりスペイン第三の都市バレンシアに向かった。
車窓に広がる葡萄畑がいつの間にかオリーブ畑に変わり、オレンジ畑が目立つようになると――到着は間も無くだ。
時折広がる桃の花のピンクが、春の到来が近いことを告げている。
2月25日リーガ23節、バレンシア対レアル・ソシエダ戦の撮影に向かった。久保建英が所属するソシエダは、前節対セルタ戦、終了間際の失点で1-1とされ、手にするはずだった勝ち点2を失っている。久保含め、何度かあった決定機逸が大きく響いた。
迎え撃つバレンシアは、不調にあえぎ降格圏19位に沈んでいる。直近8節で勝ち星を上げられず、その間、ガットゥーゾ監督が辞任、暫定監督を経て、この試合が元スペイン代表でありバレンシアのレジェンド、バラハ新監督のホーム初戦であった。
“家へ帰れ”バレンシアサポが抱えるクラブ首脳への不満
21時キックオフに合わせメスタージャ・スタジアムへ向かう。
出店の前で楽しげにはしゃぐ子供を眺めて歩を進めると、ゴミ箱に貼られた”LIM Y MENDES GO HOME”という、この試合の最中にも目立つこととなるメッセージを目にした。
リムとは、バレンシアの外国人オーナーであり、メンデスは、サッカー界に多大な影響力を及ぼす代理人の1人である、ジョルジュ・メンデスのこと。オーナーのリムと懇意にしており、アドバイザーという立場でチームに関わるが、チームのためというより、自身の利益のために選手の移籍を繰り返したことが、バレンシア崩壊の一因とされている。
さらに進んでスタジアムメインゲート前では、道を塞ぎ経営陣に対して“NO”を突きつける多くのファンの姿があった。スタジアムへの入場はすでに開始されていたが、しばらくの間、客席にサポーターの姿が無いほどだった。
チーム経営陣への怒り、チームの現状への不満、そして新監督への一縷の希望、それらが入り混じった独特な空気に包まれ試合は始まった。
3万7000人を超える満員に近いスタジアム、ピッチへ両イレブンが姿を現す。この日も先発に名を連ね、オレンジのユニホームを纏った久保は、3トップの右にポジションを取った。
立ち上がり早々のチャンス創出と久保への罵声
久保は立ち上がり早々、2度ほど右サイドでボールを持ち上がると、クロスでチャンスを作りかけた。すると、バレンシアのゴール裏からは、久保への罵声が響き渡った。すでに他クラブへも久保の名は知れ渡っている証左だろう。
またメリノの先発復帰、オヤルサバルにも徐々に復調の兆しが見えている、順調な滑り出しに思えた。