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WBCを一度は辞退…“絶不調”福留孝介はなぜ“あの代打決勝弾”を放てたのか?「打撃フォームを変えていて…」「あの人たちの影響もあった」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/10 11:02
2006年WBCの準決勝、韓国戦。0-0の7回1死二塁、代打で登場した福留孝介の一振りが、決勝2ランとなった
アジア最強のはずが、1次ラウンドで韓国に敗れ、2次ラウンドではさらに負けられないと自分たちを縛っているように見えた。結果を求めるなら眼前の1打席、1球を戦わなければならない。それは勝負の鉄則であり、ここにいる誰もが骨身に沁みて知っているはずなのに、それができない。谷繁は国を背負うことの重みをあらためて感じずにはいられなかった。そして、そんな中、結果が出ずにもがいている福留はある意味、最も眼前のやるべきことに没頭できている選手のひとりだった。
「孝介は新しくやっていることを何とか実戦に間に合わせようとしているのが見えていた。何とか間に合わせようとね……」
福留に降り注いだ爽やかな日差し
福留はペトコパークでの練習を終えるとホテルに戻り、着替えてから近くの海岸をぶらりと歩いてみた。
「ええ天気やなあって。初めて気づいた」
爽やかな日差しが降り注いでいた。自分とバットだけの世界に入り込んでいる間に、いつのまにか景色は変わっていた。
アメリカ対メキシコの試合が始まる時刻だったが、見るつもりはなかった。この日の午後9時からチーム全員で食事をすることになっていた。おそらく「解散式」になるであろうその会合まで、しばらく野球から頭を切り離して過ごそうと決めた。
<続く>