熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「メッシとマラドーナは知ってるけど…」実は“うろ覚えなアルゼンチンとW杯史” 優勝3回も“もっと勝っていたはず”不運の時代とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKaoru Watanabe/JMPA,Getty Images
posted2023/01/29 11:00
念願のW杯トロフィーを手にしたメッシとマラドーナ。2大スター以外の「アルゼンチンフットボール史」の全容は意外と知らないかも?
W杯の優勝回数はアルゼンチンが3でブラジルが5だが、準優勝はアルゼンチンが3回でブラジルが2回。1938年、1950年、1954年の3度のボイコットと1940年代の戦争による2度の中止がなければ、ブラジルと同数かそれ以上に優勝していてもおかしくない。
コパ・アメリカの優勝回数は、アルゼンチンとウルグアイが15回ずつで、ブラジルの9回に大きく水をあけている(ブラジルの優勝回数が少ない理由の1つは、自国開催の大会以外ではベストメンバーを招集しないことが多いため)。
また、クラブ南米王者を争うコパ・リベルタドーレスの国別優勝回数は、アルゼンチンが25でブラジルの22を上回る。
ブラジルから見た「宿敵アルゼンチン観」とは
この隣国の強さを、ブラジル人は熟知している。W杯カタール大会前、ブラジルのメディアと国民は優勝争いの最大のライバルをアルゼンチンとみなして警戒していた。両国が順当に勝ち進めば準決勝で激突するはずだったが、ブラジルが準々決勝でクロアチアに延長、PK戦の末に敗退したため、対決は実現しなかった。
アルゼンチンにとっての最大の仇敵はマルビナス紛争で敗れたイングランドで、他にもブラジル、ウルグアイ、隣国チリと多くのライバルがいる。一方、ブラジルにとってはほぼ唯一の宿敵がアルゼンチンだ(かつてはウルグアイも手強いライバルだったが、近年は実力差が広がった)。
そんなブラジル人ですら、W杯カタール大会でのメッシの奮闘には強い感銘を受け、決勝ではアルゼンチンを応援する人が多かった。そして、フットボールに関しては極めて熱狂的な彼らが、W杯優勝後のアルゼンチン人たちの途方もない狂喜乱舞に驚いていた。
ペレ、ガリンシャ、ジーコ、ロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョらを生んだブラジルに対し、ディ・ステファノ、マラドーナ、バティストゥータ、メッシらを育んだアルゼンチン。「フットボール王国」ブラジルが最も警戒する隣国が、世界の盟主を目指して力強い進撃を始めた。
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