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原晋監督「精神的なストレスもあったのかな…」青学大、“5区で失速の誤算”はなぜ? それでも監督は、脇田幸太朗をこんな言葉でかばった
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/03 06:06
箱根駅伝の5区で順位を落とし、3位フィニッシュとなった青学大の脇田幸太朗
2人の直前離脱…脇田は走らざるをえなくなった
12月29日の区間エントリーで5区に登録されたのは若林だった。若林は夏にケガをし、ここまで出雲、全日本と不出場だったが、11月のMARCH対抗戦では2レースでペースメーカーを務めるまでに復調し、5区起用の目処が立っていた(それゆえに、脇田は6区候補として準備を進めていたのだろう)。順調ならば、そのまま若林が2年連続で5区を務めるはずだった。しかし、前日に少し体調に不安を訴えたという。
「走ろうと思えば、走れたような気もしましたが、山上りは本人のテンションが下がったままだと、何があるか分からないですからね。1時間15分ぐらいかかるかもしれないし」
リスクを回避するために、若林の起用を見送った。
さらにさかのぼること1週間前、もう1つの誤算があった。もう一人の上り候補だった黒田が、最後の最後で故障し、起用できなくなったのだ。そのため、黒田は区間エントリーでは“当て馬”として4区に登録されていた。
3人の候補者のうち2人が離脱したことで、必然的に脇田が走らざるをえなくなったわけだ。
二強と見られていた駒澤大に2分超の大差をつけられたものの、急遽の起用にもかかわらず、終盤に粘りを見せ区間9位にまとめたのは、脇田だからできたことなのかもしれない。
原監督の展望「駒澤はブレーキがない。山下りが勝負」
レース前、原監督は、優勝を争う駒澤大との差が1分30秒に開いてしまうと“危険水域”と話していた。その危険水域を超える2分3秒の差をどう見るか。
「9区には岸本大紀(4年)を使う予定。状態は良いので、(7区区間賞だった)昨年並みでは走ってくれると思います。ただ、駒澤も結構(選手を)残していますから、そう簡単には追い付かせてもらえないと思います。でも、何が起こるか分からないのが箱根なので、頑張っていきたいと思います。
駒澤はブレーキがない。2分離れると、前が見えないんですよ。1区間では追いかけられない。まずは山下りが勝負だと思います」
岸本大紀、中村唯翔、中倉啓敦(以上4年)、佐藤一世(3年)と、前回復路を走ったメンバーが4人も残る。前回は復路新記録を樹立しており、その走りを再現できれば十分に逆転も可能だろう。指揮官も最後まで連覇を諦めるつもりはない。
逆転で連覇を果たすことができたとき、誤算だったはずの“あと2分”は、“あそこで2分差に踏み止まることができたから”と、見方が変わっているかもしれない。
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