ちなみに宮本副部長、普段の肩書きは“JR西日本中国統括本部 経営企画部長”。宮本副部長の上には役員が務めることになっている野球部長がいるものの、日常的な野球部のマネジメント業務は宮本副部長が引き受けている。

「副部長としての仕事は、野球部を勝てるチーム、そして愛されるチームにすることですね。ただ、練習や選手の獲得は監督・コーチに任せていますので、私はもっぱら裏方です。設備面を整えたり、野球部が活動しやすい環境を作ったり。野球部のファンを増やしていくことも、大事な役割ですね。機会があったら応援に行ってよ、と社員たちに働きかけたりもしています」

　野球部に所属する選手たちは、プロではないのでもちろん野球だけをやっているわけではない。試合などがない通常時であれば、午前中は社業にいそしみ、午後になると広島市内にある専用グラウンドでの練習へ。選手たちが働く場所は広島・山口地区のさまざまな部署だという。

「基本的に、入社したばかりの1年目は現場ではない間接部門に配置して社会人としての仕事に慣れてもらい、2年目から現場に出ます。現場の職場は駅や保線区などで、実際に改札口に立ってお客さまの案内をしている野球部員もいるんですよ」

写真はJR西日本野球部に所属していた近田怜王さん（2017年撮影）。現在は京大野球部監督を務める　©KYODO

“午前中のみ”野球部員の配属を嫌がる社員はいない？

　ここで宮本副部長は「野球はもちろん、仕事もちゃんとやることが大切」と強調する。

「仕事をきっちりこなす姿を見せることで、同じ職場の仲間が応援したくなる。仕事に対するひたむきな姿勢は、野球に取り組む姿勢にも共通します。野球選手としてだけではなく、人間としても認められるような選手になってほしい。社会人として、ひとりの人間として自立した人になってほしい。だから、現場できっちり仕事をしてもらうことを大切にしています」

広島市内のJR西日本野球部専用グラウンド。選手たちは午前中は社業にいそしみ、午後になるとここで練習を行う　©Masashi Soiri

　そのために欠かせないのは、現場の管理者である現場長たちの理解だ。その点、広島・山口地区には野球部出身の駅長も複数いるなど、野球部員を受け入れる環境が整っているという。

「現場長のみなさんも野球部の活動を理解してくれていて、部員たちにもできる限りの仕事の経験をさせてくれるんです。駅の業務は24時間の交代制。でも野球部員は午前中しか仕事ができません。なので、限られた範囲にはなってしまいます。それでも可能な限り仕事を教え、経験させてくれる。部員たちも手を抜かずに取り組む。これが、好循環を生むんです」

　とはいえ、ほとんどの社員がシフト制で働く中で、午前中だけのいわば“時短勤務”の野球部員。職場の戦力としては充分とはいえないはずだ。野球部員の配属を嫌がる人もいなくはなさそうだが……。

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