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JRも地方路線は赤字ばかりだが…「経営が苦しいので野球部やめる、と言いたくない」鉛筆1本コストカットする現状でも…なぜ社会人野球を続ける?
posted2022/12/28 11:20
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph by
KYODO
2022年は、日本に野球が伝わってから150年の節目だったという。特にそれで盛り上がることはなかったが、選手もファンも150年の歴史よりも目の前の試合の方が大事なのだから仕方がないところだろう。
そしてもうひとつ、150年の節目を迎えたのが鉄道である。1872年に新橋~横浜間が開業してから2022年で150年、というわけだ。
鉄道と野球。何も関係なさそうに見えるが、実は深い関係にある。日本で初めての野球チームとされる新橋アスレチック倶楽部は新橋駅構内で誕生したというし、私鉄経営の手法のひとつとしていくつもの鉄道会社がプロ野球チームを持っていたことは言わずもがなだ。いまも、西武ライオンズと阪神タイガースが鉄道系の球団である。
そして、社会人野球においても鉄道系は強豪揃いだ。
国鉄時代、地域ごとの鉄道管理局に野球部があった。それらはJR時代になっても引き継がれ、いまもトップレベルで戦っている。たとえば今年の都市対抗野球には、JR東日本東北・JR東日本・JR東海・JR西日本の4チームが出場。他にもJR九州やJR四国、クラブチームのJR北海道硬式野球クラブが活躍している。歴史と伝統の名門チーム、というわけだ。
いっぽうで、コロナ禍の影響もあって鉄道会社は経営の厳しさが増している。そうした中で、野球部はどのような存在なのだろうか。2022年、久々の都市対抗野球出場を果たしたJR西日本野球部の宮本晃副部長に話を聞いた。
「じつは社会人野球は広告効果はあまり大きくない」
JR西日本野球部は、1935年に創部した広島鉄道局の野球部をルーツに持ち、国鉄の広島鉄道管理局を経て現在まで続いている。そうした歴史からもわかるとおり、拠点を置いているのはJR西日本の本社がある大阪ではなく、広島だ。今年の日本シリーズでMVPに輝いた杉本裕太郎(オリックス)など、プロの世界で活躍する選手も輩出してきた。
「野球部の意義というと、やはりグループ会社を含めた社内の一体感の醸成が大きいところですね。特に当社のような鉄道会社の場合、いくつもの職種がそれぞれの仕事をして、一致協力してはじめて列車を安全に走らせることができるんです。違う職種のことを理解し連携を密にすることが欠かせない。そういった意味では、職場間やグループ会社、関係会社との連携を含めて野球部が相互理解を深めることに大きく貢献していると思っています」