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メッシ35歳ついに「満たすべき空虚」W杯にキス…“天才への非情な重圧”にマラドーナが「重荷を背負わせるな!」とキレた日とは
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2022/12/19 11:04
フットボール界のアイコン、リオネル・メッシがついにW杯を手に入れた
しかも、エクアドルに勝利しても、ダイレクトに予選突破できるかどうかは他国の結果次第という状況。国内では「良くてもプレーオフ」という予想が大勢を占めていたという。暗雲たれこめる情勢に、選手たちも大きな不安を抱えていた。そして、数々の栄光を勝ち取ってきたメッシでさえも恐怖心と戦っていたのである。
ギリギリで予選通過したアルゼンチンは本大会でも苦しんだ。初戦アイスランド戦ではメッシのPK失敗もあって1-1の引き分けを喫し、続くクロアチア相手にはモドリッチにスーパーミドルを叩き込まれるなど0-3の完敗。勝つしかなくなったグループステージ最終戦のナイジェリア戦ではメッシの先制点などで2-1で勝利し、何とか決勝トーナメントに進出した。
しかし決勝トーナメント1回戦、フランス戦ではエムバペ、グリーズマンら新世代の台頭著しいフランスに3-4と敗戦。メッシもアグエロへのアシストなどで意地を見せたが、またしても代表での国際タイトルを逃す形となってしまった。
マラドーナ「そんな重荷を背負わせるんじゃない!」
<名言4>
オレの後継者だって? メッシにそんな重荷を背負わせるんじゃないよ!
(ディエゴ・マラドーナ/Number642号 2005年12月1日発売)
メッシが18歳のときにはじめてアルゼンチン代表に選ばれると、メディアは彼をこぞって「メッシドーナ」と呼び、英雄マラドーナの再来とはやし立てた。この重圧に対して、マラドーナは“ご意見番”として自分と比較するべきではないと強くメッセージを発信した。
マラドーナがこの発言をしたのは2006年のドイツW杯を迎える前のタイミングである。バルセロナはフランク・ライカールト体制でエースはロナウジーニョら。10代のメッシは背番号30、19を身につける“期待の若手”枠だった。それでもドイツW杯ではアルゼンチン代表として最年少出場とアシスト、そしてゴールを記録するなど活躍を見せた。その後の活躍は説明不要だろう。
ただ、マラドーナの予言通り……メッシに対して世間は“マラドーナの伝説再び”という期待をかけた。それは天才に対する、非情なまでの重圧へと転じていった。
2010年南アフリカW杯でマラドーナとメッシは監督と選手の関係になっただけに、マラドーナはどうにかしてメッシの心の負荷を軽減しようと努めていたとも伝わる。
そんなマラドーナは2020年11月25日、60年の生涯を閉じた。