「現役時代、俺は後輩たちから怖がられたり、ちょっと引いた目で見られることもあったりしたからね。その分じゃないけど、若い選手にはこっちから入っていかないといけないと思うし、変に気を遣っても仕方ない。選手って敏感に感じるやろうから。だから話しやすい空気は作ろうと思うてる」

今秋キャンプ　©Kotaro Tajiri

　できるだけ自然体に。そして、良き兄貴分のような存在に。そのような配慮も見え隠れする。

「『時代』とかホンマは言いたくない」

　それでも、キャンプ中の数日間を取材して感じたのは、やはり「ただ優しいだけのコーチ」ではないということ。締めるところはピリッと締める。「練習の中身がかなり濃いと思います」と話す選手もいた。投手陣が球場から宿舎に戻るバスに乗り込む時刻も、ここ数年の中ではかなり遅いようにも見えた。

「俺が若い時なんて、アレやっとけ、次はコレや、とりあえず鍛えろ、走れ、そんなのばっかり。だけど、今は時代も違う。アプローチの仕方は変えていかんとね」

　そう言いながら、斉藤の表情が曇る。

「でもね、あんまり『時代』とかホンマは言いたくない。基本は同じ。言い方とかやり方が変わっているだけやと思う。守りに入ってしまうと成長できひんよ」

　近年、ホークスにはドラフト上位投手が大成しないジンクスがある。未完の大器をいかに開花させられるか。秋季キャンプのミーティングで斉藤が投手陣にかけた言葉とは――。（後編へつづく）

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