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2年前に戦力外…ソフトバンク藤井皓哉はなぜ“大出世”できた? 優勝かけた試合で泣き崩れるも…藤本監督に「リベンジ」を直訴していた
posted2022/11/21 11:01
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
KYODO
勝負の世界に「たられば」が禁物であることは百も承知だが、今シーズン、もしソフトバンクが優勝を果たしていれば、MVPには藤井皓哉(こうや)が輝いたはずだと思っている。
ソフトバンク入団1年目だった今季は55試合に登板して防御率1.12、5勝1敗3セーブ22ホールドという抜群の成績を残した。
シーズン前に一体どれだけの人がこの未来図を予測できただろうか。2年前に広島カープから24歳の若さで戦力外通告を受け、昨年は独立リーグ・四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスでプレーした投手に対して――。
育成から大出世…藤井皓哉は何者?
ソフトバンクから声がかかってNPB復帰を果たしたものの育成選手契約だったため、当初は背番号157のユニフォームで春季キャンプやオープン戦を過ごした。支配下登録を勝ちとったのはペナントレース開幕の直前だった。
ソフトバンクへの入団が決まった際の会見では「自分には特徴となるボールがない。いろんなボールをまんべんなく投げられるのが自分のスタイル」と話していたが、現在の印象はまるで違う。150キロ台中盤の威力あるストレートを投げ込み、伝家の宝刀フォークボールは千賀滉大につづく「第2のお化け」と表現したくなるほどの落差を誇る。
そして、いかにも負けん気の強そうな面構えが印象的だ。マウンドに立つと、鋭い目つきで打者を睨みつける。とはいえ、大きく吠えたり、派手なガッツポーズを見せたりするシーンはあまり見たことがない。今時の若い選手には珍しい職人気質のような雰囲気を醸し出す。現在のチームメイトで同い年の甲斐野央や栗原陵矢と全く違う物静かなタイプで、取材をしていてもリップサービスが得意な方ではないのが分かる。
そんな藤井が活躍すればするほど、ある疑問がわいてきた。なぜ、広島はこんな好投手を手放したのだろうか。