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野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンク「ドラフト上位が大成しない問題」…“新コーチ”斉藤和巳はどう見る? ミーティングで投手陣に授けた金言「ラクするのは簡単」
posted2022/12/15 11:04
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
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ドラフト上位が「大成しない」現状
エース道の伝承。新任投手コーチの斉藤和巳に求められる、最も分かりやすい期待はそれだろう。
ソフトバンクは来季から球界初の4軍制を導入するなど「育成のホークス」と名を轟かせる一方で、近年はドラフト上位選手がなかなか大成しないのがジンクスとなっている。
2015年1位・高橋純平は今季一軍登板ゼロ、16年1位・田中正義は6年間未勝利、17年1位・吉住晴斗は一軍未経験ですでにユニフォームを脱いでいる。18年1位・甲斐野央と同年2位・杉山一樹はともに最速160キロをマークしたことのある剛腕だが、先発ローテや必勝リレーへの定着という期待に応えられていない。19年以降は過渡期と言われた野手の上位指名が目立った。
ドラフト上位で指名される選手なのだから、彼らが高い潜在能力の持ち主であることは間違いない。そう話すと斉藤も深く、何度も頷いた。
「ホークスの投手ってお世辞抜きで長所だらけ。だからこそ、物足りないと感じてしまう。たぶん、ファンの方も同じ感想だと思うし、本人たちも色々感じているんじゃないかな。自分の長所をもっと出していくことで、おのずと成績も変化していくと思うから、そういったところを手助けしたり、良いアプローチを一緒に探してあげたりするのがコーチの役目でもあるかな」
斉藤自身「遅咲き」だった
いわゆる未完の大器がゴロゴロいるというわけだが、斉藤自身もまた、かつてはそんな投手だった。
沢村賞に2度も輝いて投手タイトルを総なめにした眩い栄光。その後の約6年にも及ぶ長いリハビリの苦闘。いずれの印象も強烈すぎて忘れられがちなのだが、斉藤は「遅咲きのエース」だった。最初の沢村賞を獲得した前年までプロ入団7年間で9勝しかできなかった。若手時代から右肩に爆弾を抱えていたのも原因の1つで、野手転向の可能性もあった。事実、実際にウエスタン・リーグ公式戦に外野手で出場した経験を持つ。
斉藤が何を考え、どんな変化をしてきて、球界最高峰へと上り詰めたのか。その道のりは伸び悩む若手投手たちにとって最高の手本というほかにない。