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甲子園直前にボール直撃で大ケガ…あの“フェイスガード球児”が初めて明かす「大手術で変わった価値観」大阪桐蔭エースと涙の再会も 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2022/12/13 11:02

甲子園直前にボール直撃で大ケガ…あの“フェイスガード球児”が初めて明かす「大手術で変わった価値観」大阪桐蔭エースと涙の再会も<Number Web> photograph by Genki Taguchi

今夏の甲子園でベスト4進出を果たした聖光学院のメンバー・伊藤遥喜

入学後に洗礼も…「ついてたなって」

 グラウンドには絶え間なく張りのある声が充満し、活気で溢れている。そんな聖光学院の練習を見学した伊藤は、心を奪われ「ここで成長したい」と挑戦を決めた。

 聖光学院と大阪桐蔭。進むべき道を決めた伊藤と川原は、北摂シニアを卒団するまで、口癖のように何度も、何度も約束を交わした。

「甲子園で会おうな」

 伊藤の決断は、野球人生の羅針盤を明確にした。順調よりも苦労。そんな歩みである。

 入学して最初の練習で、部長でコーチの横山博英から「元気はあるけど、それだけ」と新入生たちが突き放される。中学時代に全国大会を経験し、実績を自負していた伊藤も例外ではなく、下級生主体の練習試合などでスタメンから外されるなど洗礼を浴びた。

「横山コーチからは『今、出てる奴より劣ってるから試合に出られないんだ』とか言われましたからね。1年生の時なんか、『レギュラーになれるかも』って安心してる自分の鼻を折ってもらったっていうか。そういうことが要所であったんで、ついてたなって」

 そう、伊藤とはそういう男なのだ。

 コーチの横山はよく、過酷な現状に打ちひしがれる選手に「物事は必然の下に成り立っている」と勇気を与えるが、伊藤とはまさに、不遇と思える状況も「ついてる」と捉えられるような、前向きな精神の持ち主なのである。

 聖光学院が伊藤を導いたかのような必然。伊藤がそのことに気づけた出来事があった。

前頭骨を骨折…「甲子園だけはどうしても出たい」

 今年の3月。センバツを目前に控えた聖光学院は、練習試合で最終調整を行っていた。

 その日は関西のチームとの対戦で、大阪出身の伊藤は「敗けたくない!」と気合を込めて試合に臨んでいた。試合終盤、ベンチからツーランスクイズのサインが出る。

「何が何でも当てんぞ!」

 ボールが目の前に迫る。臆せずバットを前に出した瞬間、視界が真っ白になった。相手ピッチャーの手元から抜けたボールが、伊藤の顔面を直撃したのである。

【次ページ】 「人に助けられてるんだなって」

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