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「一番いい相手は“イケバナ”だ…」会見でスベったクロアチア指揮官ダリッチに油断はあるか? 日本を熟知した“影のキーマン”とは
text by
長束恭行Yasuyuki Nagatsuka
photograph byGetty Images
posted2022/12/04 17:01
ロシアW杯でクロアチアを準優勝に導いたズラトコ・ダリッチ監督。4年前に見せた“神通力”はまだ残っているのだろうか
とはいえ、おそらく放映権を理由に過去2度の対戦は炎天下の真昼に始まり(現地時間14時半と15時=日本時間の22時半と23時)、クロアチアにとって大きなハンデとなった。フランス大会の日本戦でダボル・スーケルに絶好のアシストを送ったアリョーシャ・アサノビッチは、「ウォーミングアップの時点で私たちは猛暑で息をするのがやっと。それなのに日本人はまるで気温が20度は低めであるかのように飛び回っていた」と振り返った。
クロアチア人が暑さを苦手とするのは今大会の初戦(現地時間13時)のモロッコ戦でも証明され、試合後にダリッチ監督は「前大会の準優勝に対してリスペクトが足らない」と不平をこぼした。しかし、決勝トーナメントに入ってからは事情が異なってくる。
キーマンは「クロアチアの安西先生」の息子?
グループリーグ3試合でスタメンを入れ替えてきた日本に対し、クロアチアはスタメンをほぼ固定してきた。疲労度という観点では日本に分があるかもしれないが、クロアチア代表にはフィットネスのエキスパートがいる。コンディショニングコーチのルカ・ミラノビッチはザグレブ大学運動学部准教授を務め、前大会では3試合連続の延長戦に耐えられる体力を選手たちに植え付けた。
今大会の変則日程や過密日程も織り込み済みで、合流後のトレーニング負荷には細心の注意を払ってきた。協力関係にある同僚(同学部教官)のブラトコ・ブチェティッチがシーズン通してモドリッチの個人トレーナーを務め、その甲斐あって37歳でも連戦に耐えられるフィジカルを彼はキープしている。
実を言えば、ミラノビッチと私はバスケットボール日本代表で一緒に働いていた。今から19年前にジェリコ・パプリチェビッチHCの初代通訳を務めた私は、代表チームと一緒にクロアチア・スロベニア・ボスニア遠征に参加した。現地ではHCの親友であるザグレブ大学運動学部学長、ドラガン・ミラノビッチがチームの体力強化を担当。「コンディショニングの権威」としてヘビーなメニューを次々に選手に課した学長は、その風貌も相まって漫画『SLAM DUNK』の登場人物にちなみ「安西先生」と呼ばれたほど。そして息子のルカが学長の右腕として日本代表の運動能力をテストし、トレーニングを遂行していた。すなわち、日本人の身体的特性も熟知する人物がダリッチ監督の真横にいる。