ブラジルならばダニエウ・アウベスがそうしたリーダーシップを発揮する。フランスにはそんなリーダーはいない。だからフランスが頂点にまで到達できるとは私には思えない。ポグバ不在のフランスは、多くの試合で敗れた。リーダーシップが欠如しているからだ。

　W杯を制覇するのはグループの力だ。ポグバを欠くフランスにはそこが欠落している。たとえばエムバペとラビオ、（オリビエ・）ジルーとラビオの間にも問題が生じるかもしれない。ひび割れが生じる可能性は大いにある。4年前のようにはグループは強固ではない。様々な問題が生じ、議論の的となっている。選手のエゴの問題だ。生じた亀裂を埋めることができない。

サプライズを起こすのはデンマークとセネガル、モロッコ

——候補のなかにEURO準優勝のイングランドを挙げなかったのはどうしてですか？

トルシエ　たしかにイングランドはEUROで好成績を収め、ハリー・ケインはプレミアリーグの得点王に輝いた。しかしイングランドは……地元開催だったEURO同様の好成績をあげられるかどうか、私には確信が持てない。

　もし君が、どこがサプライズを起こしうるかという質問をするならば、私はデンマークだと答える。それからアフリカ勢のセネガルとモロッコだ。特にモロッコはほとんど注目されていないが、彼らが大会で素晴らしい活躍をする可能性は高い。というのもヴァイッド（・ハリルホジッチ）がチームを離れてから、選手たちは心理的に解放されてチームの中には大きな連帯の感情が生まれた。

ハリルホジッチの公認として、8月31日からモロッコを率いる」レグラギ監督。急造監督の手腕やいかに　©Getty Images

　モロッコには、個の能力が高い優れた選手が揃っている。彼らがグループを形成し、リーダーシップを執る選手もいる。ヴァイッドの後を継いだ監督の（ワリド・）レグラギは素晴らしい仕事をした。開催地がカタールであるのも、同じイスラム文化圏のモロッコには有利だ。モロッコがグループリーグでベルギーの足をすくう可能性は十分にある。彼らが準決勝に進んでも私は驚かない。アフリカ勢のなかでは、モロッコが最もサプライズを引き起こす可能性が高い。

——モロッコ協会がヴァイッドを解任したのは正しい判断だったと言えますか？

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