トルシエ　あらゆる論争を終結させる決断だった。ヴァイッドはモロッコをW杯本大会に導くという素晴らしい仕事を成し遂げたが、モロッコ代表は常に論議の的だった。なぜ彼はチェルシーの（ハキム・）ツィエクを招集しないのか？　ヴァイッドは最高の選手たちを選んでおらず、彼のチームはベストチームではないという批判は常にあり、批判や論争は日に日に激しさを増していた。ヴァイッドが監督を続ける限り、喧騒は止まなかった。

　今は多くが納得するベストチームが選考された。ツィエクが実際にプレーするかどうかはわからないが、少なくとも監督会見のたびに同じ質問が発せられることはなくなった。私はモロッコに家があり、今も年のいくらかはモロッコに住んでいるからよくわかるが、ヴァイッドが去ってチームに一体感が生まれた。親善試合を見ても、選手たちが生き生きとプレーしている。そうした連帯感は、W杯グループリーグの3試合を戦ううえで絶対に必要なものだ。選手は解放され、ホームにも等しいカタールで試合ができる。ベルギー、クロアチア、カナダと同じグループFは、それぞれの力が拮抗している。ほとんどの選手がヨーロッパでプレーし、何人かはベルギーのクラブに所属している。モロッコが大躍進を遂げる要素が出そろったといえる。

決勝に進むのはブラジルとスペイン

——セネガルもまた素晴らしい選手を揃えますが。

トルシエ　カタール、エクアドル、オランダと同じグループのセネガルにとって、リーグ突破はそう難しくはない。決勝ラウンドにはオランダとセネガルが進むだろうが、エクアドルもまた素晴らしいチームだ。その意味では三つ巴の様相でもあるが、カタールにとっては厳しすぎる。使命の遂行はほぼ不可能だろう。残念ではあるが。

——それでは現時点でのあなたの決勝予想は。ブラジル対オランダですか、それともブラジル対スペインですか？

トルシエ　組み合わせをちゃんと見ていないので正確なところはわからないが、南米のチームは決勝に残って欲しい。だからブラジルと……、相手はスペインだ。

——そうですか。メルシー、フィリップ。